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2012 年度 実施状況報告書

スフィンゴシン1リン酸分泌輸送体SPNS2の生理的役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24790075
研究機関独立行政法人理化学研究所

研究代表者

久野 悠  独立行政法人理化学研究所, 循環器分子動態研究ユニット, 特別研究員 (60467636)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード脂質メディエーター
研究概要

スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は細胞内においてセカンドメッセンジャーとして働くだけでなく、標的細胞表面に発現するS1P受容体を介して細胞間情報伝達物質としても働く新しいタイプの生理活性脂質である。S1Pは細胞内で合成されるため、細胞間情報伝達物質として働くためには細胞内で合成された後、細胞外へと分泌される必要がある。申請者らはこれまでにS1Pの分泌を担う分子としてS1P分泌輸送体“Spns2”を同定した。Spns2はゼブラフィッシュの解析から得られたS1P輸送体である。哺乳類においてもオルソログ(SPNS2)が保存されているもののゼブラフィッシュのSpns2はYolk Sac Layer (YSL)という魚類特異的な組織で機能していることから、哺乳類におけるSPNS2の生理的役割は不明である。そこでSPNS2が哺乳類の生理的条件下においてS1P分泌輸送体として機能しているのか明らかにするとともにSPNS2によって供給されるS1Pの生理的役割を解明するため、SPNS2-KOマウスを作成し、その解析を行なった。
まずヒト及びマウスのSPNS2のS1P輸送活性を培養細胞を用いて測定したところ、ゼブラフィッシュSpns2と同様にS1P輸送能を保持していた。またSPNS2-KOマウスは血漿中のS1P濃度がWTの約60%程度に減少していることを見いだした。またSPNS2が血管内皮細胞において唯一のS1P輸送体として機能しており、赤血球や血小板では機能していないことを明らかにした。これは哺乳類の生理的条件下においてS1P輸送体として機能していることを示した初めての輸送体である。さらにSPNS2によって供給されるS1P依存的に胸腺からT細胞が移出することを見いだした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本申請課題ではSPNS2が哺乳類の生理的条件下においてS1P分泌輸送体として機能しているのか、またSPNS2によって供給されたS1Pがどのような生理機能を保持しているのかを解明することを目的としている。現在までにSPNS2が血管内皮細胞において唯一のS1P輸送体として機能していることをマウスの大動脈から単離した血管内皮細胞を用いて示した。さらにSPNS2-KOマウスでは血液中のS1P濃度が減少することからも生理的条件下においてもSPNS2がS1P輸送体として機能していると考えられる。つまりSPNS2は哺乳類の生理的条件下において初めてS1P輸送体として機能することが示された輸送体である。
SPNS2-KOマウスの表現型を解析したところ、血液中のリンパ球数が減少していた。一方でリンパ球の成熟の場である胸腺では成熟リンパ球が蓄積していた。リンパ球が胸腺から血液へ移動する際にS1Pシグナルが必要であるが、SPNS2-KOマウスのリンパ球は正常に成熟しており、S1Pに応答して遊走能も保持していた。つまりSPNS2-KOマウスでは遊走するために必要なS1Pが供給されないためにリンパ球が胸腺に蓄積し、血液中リンパ球数が減少していた。このようにSPNS2によって供給されるS1Pの生理的役割としてリンパ球の移出制御を見いだした。

今後の研究の推進方策

SPNS2によって供給されるS1Pの生理的役割の一つとしてリンパ球の遊走制御を見いだしたが、S1P受容体はリンパ球以外にも発現しており、この他にも生理的役割があると予想している。S1P受容体には5つのサブタイプがあり、全身に発現しているが、特に血管内皮細胞におけるS1P受容体の機能解析が進んでいる。SPNS2も血管内皮細胞に発現しており、オートクリン機構により自らの細胞を制御している可能性も考えられ、詳細に解析を進めていく。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Quantitative assay for TALEN activity at endogenous genomic loci2013

    • 著者名/発表者名
      Yu Hisano, Satoshi Ota, Kazuharu Arakawa, Michiko Muraki, Nobuaki Kono, Kazuki Oshita, Tetsushi Sakuma, Masaru Tomita, Takashi Yamamoto, Yasushi Okada and Atsuo Kawahara
    • 雑誌名

      Biology Open

      巻: 2(4) ページ: 363-367

    • DOI

      10.1242/bio.20133871

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Efficient identification of TALEN-mediated genome modifications using heteroduplex mobility assays2013

    • 著者名/発表者名
      Ota S, Hisano Y, Muraki M, Hoshijima K, Dahlem TJ, Grunwald DJ, Okada Y, Kawahara A.
    • 雑誌名

      Genes Cells

      巻: - ページ: in press

    • DOI

      10.1111/gtc.12050.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The functional roles of S1P in immunity2012

    • 著者名/発表者名
      Yu Hisano, Tsuyoshi Nishi, Atsuo Kawahara
    • 雑誌名

      The Journal of Biochemistry

      巻: 152(4) ページ: 305-311

    • DOI

      10.1093/jb/mvs090

    • 査読あり
  • [学会発表] 分泌輸送体及び受容体を介したS1Pシグナリングの生理的役割の解析2012

    • 著者名/発表者名
      久野悠、太田聡、村木倫子、川原敦雄
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場、マリンメッセ福岡
    • 年月日
      20121214-20121216
    • 招待講演
  • [学会発表] TALEN-mediated genome editing in zebrafish2012

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Ota1, Yu Hisano1, Michiko Muraki1, Tetsushi Sakuma2, Takashi Yamamoto2, Yasushi Okada1 and Atsuo Kawahara1
    • 学会等名
      18th Japanese Medaka and Zebrafish Meeting
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20120922-20120923
  • [学会発表] ゼブラフィッシュにおけるTALENによる遺伝子改変技術の開発2012

    • 著者名/発表者名
      久野 悠, 太田 聡, 村木倫子, 岡田康志, 川原敦雄
    • 学会等名
      第2回ゲノム編集研究会
    • 発表場所
      岡崎コンファレンスセンター
    • 年月日
      20120920-20120920
  • [学会発表] Roles of S1P signaling during early embryogenesis2012

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Ota, Michiko Ueno, Yu Hisano, Atsuo Kawahara
    • 学会等名
      10th International Conference on Zebrafish Development and Genetics
    • 発表場所
      USA Wisconsin
    • 年月日
      20120620-20120624
  • [図書] 最新生理活性脂質研究とその臨床・創薬応用研究2013

    • 著者名/発表者名
      久野悠、川原敦雄
    • 総ページ数
      -
    • 出版者
      メディカルドゥ

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公開日: 2014-07-24  

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