(1) 既存薬ライブラリー、生薬ライブラリーの充実:最近の新薬の臨床試験において、予想外の副作用が発生したり、ヒトで充分な体内動態(吸収性、血中安定性など)が得られなかったりするために、開発を中止しなくてはならないケースが増えている。そこで私が注目しているのは、ヒトでの安全性と体内動態が充分に確認されている既存薬(既に臨床で使われている医薬品)の新しい作用を発見し、その既存薬を別の疾患治療薬として開発する(適応拡大する)研究である。そこで本研究では所有する既存薬ライブラリーを充実させ、ストレスタンパク質誘導薬のスクリーニングの出発材料とする。大学から支給される研究費により、既に700種ほど揃えている。そこで本研究の初年度の予算を使用し、目標の800種(我が国で認可されている医薬品の総数)を超えることが出来た 長年中国で使用されてきた漢方薬・生薬も同じく、副作用の少ない新薬を発見するために有用な出発材料になる。最近、過去の研究(HSP70誘導生薬の化粧品としての開発に成功)を評価した中国政府から特別に生薬2000種が我々に供与された。そこでこの生薬の溶解法や動物・細胞への投与法を確立し、生薬ライブラリーを構築した。 (2) 遺伝子改変マウスの導入:研究で対象とするストレスタンパク質は、HSPs(HSPにはたくさんの種類があり、本研究ではHSP70、HSP90、HSP25、HSP47、HSP60を対象とする)、小胞体ストレスタンパク質(小胞体がストレスを受けたときに産生が誘導されるタンパク質:GRP78、ORP150)、HO-1、SODである。当該年度に新たに導入したマウスは、HSP90、HSP60、GRP78、HO-1過剰発現マウスであった。
|