本研究では,家族性アミロイドポリニューロパチーの新規治療薬の開発を最終目的とし,「変異トランスサイレチン (TTR) の特異的細胞外分泌抑制および細胞内クリアランスの促進」を可能にする小胞体内TTR四量体形成阻害剤の創薬シーズ探索を計画している. 本年度は,バーチャルスクリーニングにより選別した単量体に結合し,四量体形成を阻害する可能性が高い化合物(リードライク化合物40種類(200万種類中),フラグメントライク化合物18種類(50万種類中))から入手可能な18化合物について検討を行った.変異TTRを恒常的に発現する細胞に各種化合物を処理し,細胞外分泌量の変化を指標にスクリーニングを行った.その結果,変異TTRの細胞外分泌を抑制する化合物として2種類を同定した.次に,変異TTRの四量体形成能を評価する精製タンパク質を用いた新規in vitroアッセイ法を構築し,上記化合物の四量体形成阻害能を調べた.その結果,分泌抑制作用を示した2種類の化合物は四量体形成阻害能を有していること,また,その四量体形成阻害能と分泌抑制作用に相関がみられることが明らかになった. したがって,上記2化合物は変異TTR分泌抑制を標的とした家族性アミロイドポリニューロパチー治療薬のリード化合物となり得ると考えられる.今後,化合物の最適化により細胞,個体レベルでの有効性・安全性の評価を行い,臨床応用可能な化合物の開発を行う予定である.
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