研究課題
本年度ではラット海馬における恐怖条件付け文脈学習時のシアリダーゼ活性変化のin vivo計測を行うとともに、シナプス開口放出におけるシアリダーゼの機能について検討した。初めに、恐怖条件付け文脈学習時のシアリダーゼ活性変化についてインビボマイクロダイアリシス法を利用して検討した。Wistar系雄性ラット(8週齢)の海馬に微小透析膜を挿入した。覚醒下、ホームケージ内で人工脳脊髄液(ACSF)による灌流を開始した後、ラットをフット刺激チャンバーに入れて電気刺激を与え、再びホームケージに戻した。灌流液中に回収されたシアル酸量を高速液体クロマトグラフィーで測定した結果、学習時に海馬細胞外液に含まれるシアル酸量が有意に増加することが見出された。ラットの記憶が成立していることを確認する目的で、翌日にラットをフット刺激チャンバーに入れた。その結果、フット刺激を与えていない群と比較してフリージング時間が有意に延長した。次に、インビボマイクロダイアリシス法を利用してグルタミン酸放出におけるシアリダーゼの役割について検討した。ラット海馬をACSFで灌流した後、シアリダーゼ阻害剤(DANA、0.1-1 mM)を含むACSFで灌流した。海馬細胞外液中のグルタミン酸量は、DANAの濃度依存的に増加した。次に、シナプス開口放出におけるシアリダーゼの影響を検討した。海馬神経初代培養細胞におけるシナプス開口放出を蛍光色素FM1-43で計測した結果、DANAを作用させることによって開口放出が促進された。以上より、恐怖条件付け文脈学習時にシアリダーゼ活性が増加すること、また、シアリダーゼが海馬興奮性神経伝達の制御に関与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画に準じて研究を遂行し、シアリダーゼ活性が記憶形成時に変化することやシアリダーゼがグルタミン酸開口放出の制御に関与することが示唆された。これらの研究成果は、論文や学会発表を通じて報告した。以上のことから、当該研究がおおむね順調に進展していると判断した。
シアリダーゼには細胞内局在の異なる4つのアイソフォームが存在する。当講座ではこれまでに、シアリダーゼが海馬依存性記憶に関与すること、また、学習時の神経興奮と連動してシアリダーゼ活性が増加することを見出している。しかし、どのアイソフォームが関与しているのかについては不明である。そこで次年度では、各種アイソフォームに対するsiRNAやノックアウトマウス等を利用して、記憶に関与するシアリダーゼアイソフォームを明らかにする。
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