研究課題
動物がもつシアル酸の主な分子種としてN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)とN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)が知られている。Neu5Acはホ乳動物の脳に豊富に存在し、記憶や神経回路形成、神経伝達の調節に重要な役割を担う。一方Neu5Gcは、脳においてNeu5Gcの合成に関わる酵素(CMP-Neu5Ac hydroxylase, CMAH)が発現していないことから、脳に含まれる量は極めて微量である。また、ヒトはCMAHを欠損しており、Neu5Gcを合成することが出来ない。研究代表者らはラジオアイソトープ標識されたNeu5Gcを合成し、ラットの尾静脈に投与したところ、投与3時間後に海馬から比較的高い放射活性が検出されることをオートラジオグラフィーを利用した実験から明らかにした。そこで海馬に含まれる放射活性を詳細に解析したところ、GM1やGD1a、GD1b、GT1b、GQ1bなどのガングリオシドから放射活性が検出された。食餌などに由来して血中に取り込まれたNeu5Gcのうち一部は脳に移行し、糖脂質などの構成成分として利用されることが示唆される。シアリダーゼはNeu5Acと比較してNeu5Gcに対する基質特異性が低いことから、糖鎖に含まれるNeu5GcはシアリダーゼによるNeu5Acの加水分解を競合的に阻害することによってシアリダーゼによるシアル酸シグナルの制御が乱れ、海馬の機能に影響する可能性がある。
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