研究課題/領域番号 |
24790081
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
河野 孝夫 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70581742)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | リーリン / プロテアーゼ / 脳 / 神経細胞 / adamts |
研究概要 |
本研究課題では、脳の形成に重要な役割を担う巨大分泌蛋白質リーリンの特異的分解機構の解明することを目的とした。リーリンは、分子内の2カ所(N-t及びC-t site)で特異的分解を受け、精神神経疾患患者ではN-t site分解が亢進することが報告されている。我々は、リーリンのN-t siteに点変異を導入することで、分解を受けない(非分解型)リーリンを作製することに成功した。培養神経細胞にリーリンを添加し、非分解型リーリンの下流シグナル活性能を調べたところ、野生型リーリンに比べ、非分解型リーリンは分解されにくく、その生理活性は持続しやすいことを見いだした。非分解型リーリンは、リーリン機能が低下した病態の治療に応用できるかもしれない。また、非分解型リーリンを特異的に認識する抗体を利用することにより、非分解型リーリンはリーリン産生細胞の周辺にのみ局在することが分かった。これらのことから、N-t siteの分解は、リーリンの活性や局在を調節することが示唆された(投稿中)。 リーリンを分解する活性を持つプロテアーゼとしてADAMTS-4を同定し、その分解活性は、ADAMTS-4のアイソフォーム間で異なることを論文として発表した(Hisanaga et al., FEBS letter, 2012)。さらに、最近ADAMTS-4よりも、リーリン分解活性が強いプロテアーゼを神経細胞培養上清中から同定することに成功した。現在、このプロテアーゼに対する抗体を作製中であり、今後脳内における発現部位を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、巨大分泌蛋白質リーリンの特異的分解による機能制御機構を解明し、リーリン分解に異常をきたす精神神経疾患の診断や治療を目指す研究課題である。本年度は、リーリンの特異的分解部位の同定、非分解型リーリン、及び非分解型リーリン特異的抗体を作製する事に成功した。これらの知見及びツールを用いる事により、リーリンは特異的分解により、その生理活性や局在が制御されることが判った。非分解型リーリンは、野生型リーリンに比べ、生理活性が持続しやすいので、リーリン機能が低下した病態におけるリーリン補充療法への応用が期待できる。 また本年度は、リーリン分解を担うプロテアーゼの有力な候補を同定することに成功した。今後、生体内におけるこのプロテアーゼの意義を調べることで、生体内におけるリーリン分解の意義の解明や、プロテアーゼ阻害剤(リーリン機能増強剤)の開発にもつながることが期待できる。以上の点から、本年度の研究は、期待以上に進んだと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
リーリンの分解を担う候補プロテアーゼに対する抗体を作製し、マウス脳内における候補プロテアーゼの局在を明らかにする。免疫染色に使える抗体が得られなかった場合は、In situ hybridization法によりmRNA発現部位を明らかにする。さらに、候補プロテアーゼの過剰発現や、RNAi法により発現抑制した際、リーリン分解が促進、減少することを確認する。 アデノウィルスベクターを用いて、野生型もしくは非分解型リーリンを脳内で過剰発現し、非分解型リーリンが生体内でも分解されないことを確認する。さらに、リーリン欠損マウスにリーリンを過剰発現した際に、脳の形成や機能が回復するか否かを調べる。 以上の実験により、生体内におけるリーリン分解の意義を解明する。さらに生体内でリーリン活性を増強した際の効果を明かにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究は、当研究施設に備わる設備で全て遂行可能であるので、研究経費は消耗品及び旅費に充てる。
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