研究概要 |
本研究では、脳の形成と機能に必須な役割を担う分泌蛋白質リーリンの、プロテオリシスによる機能制御機構を解明することを目的とした。 リーリンは、2カ所(N-t、及びC-t site)でプロテアーゼによりプロテオリシスを受ける。N-t siteでのリーリン分解は、細胞外及びエンドソーム内で起こるが、エンドソーム内でのリーリン分解の意義は不明であった。前年度に作製したN-t siteに点変異を導入したリーリン(PDリーリン)は、培養上清中及びエンドソーム内のプロテアーゼに対して抵抗性を持つこと、またPDリーリンは、エンドソームに取り込まれた後も持続した生理活性を示すことが分かった。さらに抗非分解型リーリン抗体を作製し、リーリンの分解断片が、リーリン産生細胞から離れたところにも存在することも分かった。以上からエンドソーム内におけるリーリンの分解は、リーリンの生理活性持続時間やその効果範囲を制御する役割を持つことが示唆された(Koie et al.,2014)。 前年度同定したリーリン分解活性を持つプロテアーゼのノックアウトマウスを入手し、胎生期脳におけるリーリン分解断片量を調べたところ、このマウスではN-t siteにおけるリーリン分解が著しく低下することが分かった。このことから我々が同定したプロテアーゼは、生体内においてリーリン分解を担う主要なプロテアーゼであることが示唆される。さらに、このマウスは出生直後に死に至ることが分かった。今後、floxマウスを作製し、成体におけるリーリン分解意義の解明を試みる予定である。 また、我々が最近見いだした新規リーリン分解についての研究も進め、この分解を受けていないリーリンと結合する分子が、生後海馬の錐体細胞に多く存在することが分かった。今後、このリーリン結合分子の同定及び生理的意義の解明を行う予定である。
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