研究課題/領域番号 |
24790082
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
町田 拓自 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (90433424)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ドコサヘキサエン酸 / 圧力ストレス / 血管平滑筋細胞 / シクロオキシゲナーゼ / 細胞増殖 / TRPCチャネル |
研究概要 |
本研究は、収縮期高血圧を擬似的に再現した圧力ストレス環境下において、n-3系多価不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)が血管平滑筋細胞に対してどのような影響を及ぼすかを検討し、DHAによる循環器疾患に対する有用性の一端を明らかにすることを目的として行われている。具体的には、平成24年度に①圧力ストレス環境におけるアラキドン酸代謝系へのDHAの作用の検討、平成25年度に②圧力ストレスが血管平滑筋細胞増殖能に及ぼす影響とDHAの作用、③圧力ストレスがカルシウム代謝に及ぼす影響とDHAの作用の検討を行うこととしている。これらの具体的な3つの検討項目は、循環器疾患の進展に深く関わる因子であるが、DHAが、実際の病態においてこれらの因子にどのように関わっているのか、その詳細は明らかではない。本研究では、研究代表者の所属する研究グループで開発した培養細胞に圧力を負荷できる特殊な装置を用いることで、収縮期高血圧を想定した圧力ストレス環境下でのDHAの薬理作用を細胞レベルで明らかにする。また本研究では、圧力による細胞レベルでの病態生理学的な機能変化の観察も可能である。研究代表者は、これまでにDHAの血管平滑筋細胞への影響について、脳卒中および本態性高血圧症のモデル動物である脳卒中易発症高血圧自然発症ラットを用いて検討しており、現在実施中の課題を行うことにより、遺伝的高血圧モデルと実験的高血圧モデルの両面からDHAの作用を明らかにすることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、圧力ストレスが血管平滑筋細胞アラキドン酸代謝系に及ぼす影響とDHAの作用について明らかにすることを目的としていた。具体的には、圧力ストレスが、アラキドン酸代謝系の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)発現およびそのmRNA発現、代謝物であるプロスタグランジンI2(PGI2)産生にどのような影響を与えるかを検討し、さらにDHAの作用を検討することである。本検討により、収縮期高血圧を想定した圧力ストレスが、インターロイキン-1 β(IL-1β)刺激によるCOX-2発現をmRNA発現レベルから有意に抑制することを明らかにした。さらにIL-1βによるCOX-2発現に必須のMAPキナーゼの活性化に及ぼす圧力ストレスの影響を検討し、圧力ストレスはMAPキナーゼのリン酸化を抑制することを明らかにした。従って、圧力ストレスによるCOX-2発現の抑制作用は、MAPキナーゼ活性化の抑制によるものであると考えられる。今後、さらにその上流のシグナルへの圧力ストレスの影響を検討し、具体的な圧力ストレスの作用点を明らかにしたい。またDHAは、IL-1β刺激によるCOX-2発現を圧力ストレスの有無に関わらず増強した。PGI2産生の測定に関しては、現在、実施中である。また、平成25年度に検討予定の圧力ストレスによる細胞増殖能への検討についても開始しており、培養細胞に圧力ストレスを負荷すると、細胞容量が増加することを見出した。血管平滑筋細胞の容量の増加は、血管壁の肥厚に関連するものと考えられ、収縮期高血圧を想定したモデルを用いることにより、圧力負荷そのものが病態の進展を促進する一つのエビデンスになる。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、本研究計画はおおむね順調に進展しているので、引き続き当初の研究計画通りに遂行していくことを基本とする。しかし、平成25年度に行う研究計画(圧力ストレス、DHAが細胞増殖に及ぼす影響の検討)の一部をすでに開始し、新しい知見が得られている反面、平成24年度に行う研究計画(圧力ストレス、DHAがアラキドン酸代謝系に及ぼす影響の検討)の一部はまだ終了していないので、アラキドン酸代謝系への影響について優先して検討を進めていく。また、平成25年度に検討予定の圧力ストレスによるカルシウム代謝系への影響についても検討を開始した。平成24年度の研究に関しては、研究代表者の所属する研究室の学部学生の協力が得られたのもおおむね順調に進展した要因であるので、平成25年度も同様の体制で行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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