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2012 年度 実施状況報告書

マクロファージ古典的活性化のキーとなる小胞体アミノペプチダーゼの分泌とその制御

研究課題

研究課題/領域番号 24790083
研究種目

若手研究(B)

研究機関帝京平成大学

研究代表者

後藤 芳邦  帝京平成大学, 薬学部, 助教 (90455345)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードアミノペプチダーゼ / マクロファージ / 貪食 / サイトカイン / LPS / トール様受容体
研究概要

1.ERAP1による貪食活性亢進機構の解明
申請者は分泌型ERAP1がマクロファージの貪食を亢進させることを明らかにしてる。この貪食亢進効果の分子機構を明らかにするために、組換え型ERAP1で処理したRAW264.7細胞の蛍光免疫染色を行った。その結果、ERAP1の添加がオプソナイズされた蛍光分子の細胞表面への吸着量を増大させること、食胞形成を亢進させることが示唆された。また、ERAP1の添加が、Fcg受容体Iの細胞表面量を上昇させたこと、一方で発現量にほとんど影響を与えなかったことから、Fcg受容体Iの細胞膜への移行を亢進しうることを明らかにした。
2.ERAP1の新規分泌リガンドの同定
TLR1/2、2/6、および9リガンドがマウス腹腔内マクロファージのERAP1分泌を惹起することを明らかにした。いずれの受容体も下流のMyD88依存性経路の活性化がERAP1の分泌を引き起こす原因であった。さらに申請者は、同経路の活性化に伴い分泌されるTNF-alphaとIFN-betaによる共刺激がマウス腹腔内マクロファージにおけるERAP1の分泌を惹起することを明らかにした。このことからERAP1の分泌には(1)TLRとリガンドの結合に伴うMyD88依存性シグナリングの活性化、(2)TNF-alpha、IFN-betaの分泌が重要であることを明らかにした。
3.ERPA1の分泌に重要な分子内ドメインの同定
ERAP1の各ドメインを欠失させた変異体をHEK293細胞で発現させ、培養上清中の変異体ERAP1量を検出したところ、他の類縁酵素には認めあれない特徴的な挿入配列(エキソン10コーディング領域)の欠失がERAP1の分泌を惹起することを明らかにした。以上の結果から上記挿入配列がERAP1の分泌を制御していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要で示した3については学術論文に掲載された。また、2については、現在投稿中である。
さらに、1についても分泌型ERAP1が貪食活性に関与する受容体の機能亢進を担っていることが明らかになりつつあり、分泌型ERAP1による貪食活性亢進機構の解明の端緒を開いた。
また、分泌型ERAP1による新しい生理作用も探索しているが、ERAP1遺伝子のノックダウン実験より本遺伝子の発現量もしくは分泌量の低下がERAP1の細胞遊走や細胞の形態に影響を及ぼす可能性があることを確認している。
以上のように、分泌型ERAP1のマクロファージ活性化における役割または分子機構が徐々に明らかになってきており、研究は順調に進行していると考える。

今後の研究の推進方策

ERAP1による貪食活性亢進の分子機構を解明するため、ERAP1がいかにしてFcg受容体Iの細胞表面における発現量を上昇させるのかについて解析する。申請者はすでにERAP1の酵素活性が本作用に影響を及ぼすことを明らかにしつつある。そこで、分泌型ERAP1の基質ペプチドを探索し、その中から貪食亢進作用に寄与しうるペプチドを選抜する。具体的にはERAP1やIFN-gamma/LPSで処理したマウス腹腔内マクロファージもしくはマウスマクロファージ株RAW264.7の培養上清をゲルろ過カラムで分画し、貪食活性化画分を選抜する。その画分から貪食活性化ペプチドをLC-MS/MSを用いて同定する。さらなる分画が必要な場合、陰もしくは陽イオン交換カラム等を駆使する。また、上記実験においてペプチド同定が困難な場合、触媒残基に変異を導入した点変異体ERAP1(作製済)を用いたプルダウンアッセイにより変異体ERAP1に結合するペプチドを網羅的に探索する。
ERAP1の分泌を制御するエキソン10配列への結合タンパク質を同定する。申請者は、タプシガルギンにより化学的に細胞内のカルモジュリンを活性化させたRAW264.7細胞(ERAP1の分泌は確認済)を用いたマイクロアレイ解析によりカルモジュリン活性化前後の遺伝子発現の変化を網羅的に解析し、この中から発現量に変化のあった候補の小胞体タンパク質を選抜している。候補タンパク質遺伝子のノックダウン実験およびエキソン10配列に対する免疫沈降実験を行い、ERAP1の分泌を制御するタンパク質を同定する。

次年度の研究費の使用計画

研究計画に則っておおむね順調に研究は遂行された。しかしながら所属大学が移転した影響で研究計画を変更せざるを得ない部分もあった。そこで2013年度は、計画変更によって生じた金額と支給金額を合わせて申請した。2012年度の繰越金額は、昨年度購入を予定していた細胞培養試薬に使用したい。また、2013年度支給分については、クロマトグラフィーに使用する樹脂や細胞染色に使用する抗体、マウス購入・飼育、遺伝子導入試薬・マイクロアレイ解析のために使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Exon 10 coding sequence is important for endoplasmic reticulum retention of endoplasmic reticulum aminopeptidase 12012

    • 著者名/発表者名
      Hattori A., Goto Y., Tsujimoto M.
    • 雑誌名

      Biol. Pharm. Bull.

      巻: 35 ページ: 601-605

    • DOI

      10.1248/bpb.35.601

    • 査読あり
  • [学会発表] 小胞体アミノペプチダーゼの分泌を介したマクロファージのNO産生亢進2012

    • 著者名/発表者名
      後藤 芳邦, 小川 健司, 服部 明, 辻本 雅文
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(博多)
    • 年月日
      20121214-20121216

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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