研究課題/領域番号 |
24790085
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研究機関 | 千葉科学大学 |
研究代表者 |
川田 浩一 千葉科学大学, 薬学部, 講師 (30581631)
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キーワード | ER stress / Autism / Neuonal differentiation / Neurite outgrowth / HRD1 |
研究概要 |
本研究の目的は,自閉症発症と小胞体ストレスについて,両者間の関連性を明確にするとともに,自閉症発症のメカニズムを解析することにある.当該年度の計画は,胎児期の小胞体ストレスと自閉症の因果関係を明確にすることである. in vitro解析において,前年度まではツニカマイシン誘導性の小胞体ストレス負荷により神経分化の促進および樹状突起の伸張抑制が認められていた.しかし,この現象が小胞体ストレスに特異的な現象であるか不明であった.そこで,ツニカマイシンとは作用点の異なる薬物を用いて解析したところ,同様の結果が得られた.つまり,自閉症の原因の一つとも考えられる神経分化の促進および神経成熟の抑制は小胞体ストレスによって誘発されることが明確になった.さらに,小胞体ストレスによる神経分化の促進は,ユビキチンリガーゼであるHRD1の発現が増加していることに起因する可能性が示唆された. また,in vivo解析において,妊娠マウスにバルプロ酸ナトリウムを投与することにより,自閉症様の症状をもつ仔マウスを作成した.この自閉症モデルマウスを用いて,生後1日目の脳内各部位の各種神経系マーカータンパク質,シナプス形成タンパク質および小胞体ストレスマーカータンパク質の発現変化を解析した.その結果,大脳皮質で小胞体ストレスマーカーの有意な増加が認められた.しかし,海馬においては,小胞体ストレスマーカーの発現に変化は認められなかった.さらに,生後1日目の大脳皮質において,シナプス形成因子であるCADM1の発現量が低下していた. 以上の結果より,自閉症発症には発生初期段階における小胞体ストレスによる神経分化および突起伸張の異常が関与する可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していたin vivo解析における結果が,当初の予想通りの成果が出ず予定通り進行しなかった.一方で,自閉症モデルマウスを用いたシナプス関連因子と小胞体ストレスとの関連性が現在進行中である.また,マウスを用いて直接小胞体ストレスを負荷させる解析も計画中である.以上のことより,区分「(2)おおむね順調に進行している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
In vitro解析は,非常に順調に進行しているので,今後は自閉症モデルマウスの胎生期由来の初代培養を行うことで小胞体ストレスによる神経分化および突起伸張の異常と自閉症との関連性をさらに深く追求していく予定である.この実験系はすでに確立されているので比較的早期に解析し終えると予想している. In vivo解析は,胎児期のマウスに直接小胞体ストレスを与える方法として羊膜内に小胞体ストレス誘導剤を注射することを計画していたが,薬物量,投与時期および出産に対するリスク等の様々な要因が解決できていない.今後もこの方法については継続していく予定であるが,代替法として小胞体ストレス関連分解に寄与しているユビキチンリガーゼHRD1のノックアウトマウスを用いることを計画している.HRD1-KOマウスは小胞体ストレスが慢性的に高い状態にあるので,本解析に応用可能であると予想している.
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