研究課題
ヒトを含めた生体内には、D-アミノ酸を機能分子とする新規なバイオシステムが存在する。我々は、その分子論的解析を行うため、多細胞モデル生物である線虫(Caenorhabditis elegans)を用いて研究を行っている。D-アミノ酸を酸化的に分解する酵素として、中性・塩基性D-アミノ酸を基質とするD-アミノ酸オキシダーゼ(DAO)と、酸性D-アミノ酸を基質とするD-アスパラギン酸オキシダーゼ(DDO)が知られている。以前に我々は、線虫には1種類のDAOと3種類のDDO(DDO-1、-2、-3)をコードする機能的遺伝子が存在すること、また、これらの遺伝子それぞれに欠失のある変異株では、D-アミノ酸の体内含量が上昇するとともに産卵数の低下や寿命の延長などが認められることを明らかにした。平成24年度は、昨年度の報告書に記載したように、DAOおよびDDO変異株で認められた産卵数の低下が卵子の形成異常(数や質の低下)に起因していることを明らかにした。また、DDO-2およびDDO-3変異株では、産卵行動の調節に関与するコリン作動性神経伝達に異常が認められることを明らかにした。平成25年度は、各変異株と野性株を用いたDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、DDO-3変異株ではL-トリプトファン(L-Trp)代謝経路遺伝子群の発現量が変動していることが示唆された。次に、L-Trpの主要な代謝経路の1つであり、寿命との関わりが知られているセロトニン(5-HT)経路について詳細に解析したところ、DDO-3変異株では、(1)L-Trp含量の上昇、(2)5-HT経路の律速酵素であるTrpヒドロキシラーゼの発現量の低下、および(3)様々なニューロンにおける5-HT含量の低下が認められた。これらの結果から、DDO-3変異株で認められた寿命の延長は5-HT経路の変化に起因していると考えられた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Biochemistry
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http://www.pharm.kitasato-u.ac.jp/ac/SeitaiHP/