研究課題/領域番号 |
24790087
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
小濱 孝士 昭和大学, 薬学部, 助教 (60395647)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 酸化LDL / 動脈硬化症 / リピドミクス / リポタンパク質 / モノクローナル抗体 |
研究概要 |
1. microtiter plateを用いた生体内酸化LDL回収法の構築:酸化PC特異的モノクローナル抗体(DLH3)または非免疫IgMをコートしたwellにヒト血漿LDL画分を添加し、回収された脂質成分をLC-MS/MS(QTRAP5500)により解析した。DLH3のwellから回収されたサンプルには、IgMや抗体なしから回収したものと比較してより多くのコレステロールエステル(CholE)、PC類が検出された。このことからmicrotiter plateを使用した酸化LDL回収が有効であり、これらが酸化LDL由来の脂質成分であると考えられた。 2. native LDL、銅酸化LDLおよび生体内酸化LDLの間での脂質成分の比較:生体内酸化LDLでは未酸化のCholE(リノール酸、アラキドン酸エステル)がnative LDLと比較して極めて少なかった。MRM測定により分子種分析を行ったところ、銅酸化LDLではCHO、COOH基を含む短鎖型酸化CholE含量が高かったのに対し、生体内酸化LDLでは短鎖型酸化CholEは極めて少なく、hydroxy、hydroperoxy、keto型といった長鎖型酸化CholEが大部分を占めた。さらにPC成分についても同様に分子種分析を行ったところ、銅酸化LDLでは不飽和脂肪酸含有PCの減少が著しく、LysoPCの含有率が約20%と最も高かった。一方、生体内酸化LDLでは不飽和脂肪酸含有PCはnative LDLと銅酸化LDLの中間の値を示し、LysoPCが確認されなかった。また銅酸化LDLでは長鎖型酸化PCと短鎖型酸化PCがどちらも増加したのに対し、生体内LDLでは長鎖型酸化PCが増加し、短鎖型酸化PCの増加はほとんどみられなかった。以上の結果から銅酸化LDLと生体内酸化LDLでは不飽和脂肪酸を含む脂質成分の組成が大きく異なることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. DLH3抗体を用いたin vivo酸化LDLの回収法の最適化と脂質成分の定性・定量解析系の構築:生体内酸化LDLを回収するための方法として、microtiter plateを用いた新たな方法の構築に取り組んだ。その結果、酸化LDL由来の脂質成分として様々な分子種のCholEやPCの酸化物を検出することができた。またこれらは、銅酸化LDL中の成分とは異なった脂質組成が示されたことから、本方法が生体内酸化LDLに含まれる酸化脂質成分の分析に有効であることがわかった。 2. 酸化LDLに含まれるタンパク質成分の修飾構造の解析:native LDLと銅酸化LDLのタンパク質成分の酸化修飾構造をより詳細に調べるために、LC-MS/MS(TripleTOF5600)を用いて分析した。その結果、LDLの主要タンパク質成分であるapoB-100のsequence coverageはnative LDLでは95%、銅酸化LDLでは85%と以前の測定より向上することに成功し、これによりacrolein、hydroperoxynonenal、oxononenal、malondialdehydeなどの脂質過酸化生成物による修飾や、ニトロ化、酸素付加を受けたアミノ酸残基を新たに同定することができた。また同じアミノ酸残基にこれら修飾が複数生じている部位が多く検出され、LDL粒子の不規則な酸化修飾を生じていることが明らかとなった。 健常者血液を用いた上記の予備的実験によって、冠動脈疾患患者などから得られる臨床サンプルの解析において着目すべき酸化脂質やタンパク質酸化修飾構造を明らかにすることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した酸化LDL の回収と脂質およびタンパク質成分の分析手法を、冠動脈疾患患者の心臓カテーテル治療から得られた血液サンプルに応用し、動脈硬化性疾患に伴って引き起こされる酸化LDL 含有脂質の組成変化や、酸化脂質の生成について解析を行う。健常者由来の酸化LDL では見られない特徴を明らかにし、動脈硬化性疾患の発症に関連する酸化LDL の特徴を明らかにする。これにより”生体内酸化ストレスマーカー”となり得る成分の発見を目指す。 なお、平成24年8月から海外留学をしており、日本において本研究課題を進めることができていない。平成26年7月に帰国予定であるため、平成25年度で終了予定の本研究課題を平成26年度まで1年延長させていただくように申請する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年8月から海外留学をしており、日本において本研究課題を進めることができていないため、次年度使用額が生じた。平成26年7月に帰国予定であるため、平成25年度で終了予定の本研究課題を平成26年度まで1年延長させていただくように申請する予定である。
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