研究課題
循環血中のLDL画分から極めて微量の酸化LDLを効率よく回収する方法を構築するために、陰イオン交換カラムを用いて陰性荷電に富むLDLを分離するステップを組み合わせた方法を新たに試みた。健常人の血漿からLDL画分を超遠心法により分離し、陰イオン交換カラム(HiTrapQ)に流して500 mM NaClで溶出される画分(LDL(-))について、サンドイッチELISAにより酸化LDLとapoBを定量した結果、酸化LDL/apoB比がカラム非吸着画分(LDL(+))よりも4~6倍を示したことから、酸化PCに富む酸化LDLがLDL(-)に濃縮されることがわかった。そこでこの方法を冠動脈疾患患者の心臓カテーテル治療により得られる残余血液のLDL画分についても検討したところ、健常者血液よりも高効率で濃縮された。次に、抗酸化ホスファチジルコリン抗体(DLH3)を用いたアフィニティ抽出をLDL(+)とLDL(-)に対して行い、回収された脂質成分についてLC-ESI-MS/MSにより脂質分子種を解析した。その結果、LDL(+)とLDL(-)の間で脂質含量の違いがより明確となり、LDL(-)には酸化LDLが豊富であることがさらに裏付けられた。またタンパク質成分の酸化修飾についてもLC-ESI-MS/MSにより解析した結果、apoBのリジン残基におけるマロンジアルデヒドやアクロレイン修飾が検出された。以上の結果から、陰イオン交換カラムによる陰性荷電LDLの分離とアフィニティ抽出を組み合わせた方法は、酸化LDLの回収とその分子レベルでの解析に極めて有効な方法であることを新しく見出した。このようにして回収された生体内由来酸化LDLはlysoPC含量が低く、銅酸化LDLとは異なった脂質組成の特徴を示した。以上の結果は、生体内においてはLDL中の脂質は酸化ストレスや酵素反応による直接的な酸化だけでなく、様々な代謝や脂質リモデリングによってさらに多様な脂質分子種に変化していることを強く示唆するものである。
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昭和学士会雑誌
巻: 75 ページ: -
Lipids Health Dis.
巻: 13 ページ: 48
10.1186/1476-511X-13-48.
http://www.showa-u.ac.jp/sch/pharm/major/biolchem/index.html