刻印付けは孵化直後のヒナが動く物体を繰り返し追従し、記憶する現象である。これまで、刻印付けに関わる遺伝子機構はほとんど明らかにされてこなかった。そこで、刻印付け直後に最も発現した脳由来神経栄養因子BDNFに着目した。刻印付けに必須の大脳領域IMHAでBDNFの発現上昇、さらにBDNF受容体TrkBやその下流のAktのリン酸化の促進を見出した。これはBDNF/TrkBシグナリングが刻印付けに関わることが示唆する。しかし、IMHA領域へのBDNFやTrkBの阻害剤の直接注入では、学習促進や阻害は見られなかった。これらはBDNFは刻印付けに関わるが、必須ではなく他の因子に補助的に働くことを示唆する。
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