研究課題
(1) EBI3のアダプター分子としての作用機序:まず、EBI3とp62/SQSTM1が会合するかを、それぞれの分子に異なるタグを付けた発現ベクターを強制的に発現させた培養細胞の細胞溶解液を、それぞれのタグまたは分子に対する抗体を用いた免疫沈降反応により調べると、EBI3とp62/SQSTM1が会合することがわかった。同様な会合は、共発現細胞をそれぞれの異なる蛍光で標識した抗体で染色すると、オートファジーのマーカーであるLC3で形成されるオートファゴソームに共局在することによっても示された。次に、野生型およびEBI3欠損マウス由来ナイーブCD4+T細胞を抗CD3/抗CD28抗体で刺激するとIFN-g産生が低下することを昨年見出したが、この時にオートファジーの程度をウエスタンブロット解析よりLC3-II発現量で比較すると、顕著な差は見られず、オートファジー以外の関与の可能性も示唆された。(2) オートファジー誘導におけるEBI3の役割:p62/SQSTM1は、オートファジーによる凝集異常蛋白の分解促進や腫瘍増殖に重要であるため、この過程におけるEBI3の役割について検討した。マウスメラノーマ腫瘍B16F10にEBI3を遺伝子導入した腫瘍を作製し、腫瘍増殖への影響をin vitroおよびin vivoで比較すると、EBI3を遺伝子導入すると増殖が亢進される傾向にあることがわかった。さらに、この時、LC3-II発現が強くなり、オートファジーも亢進していることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
実験順序の後先はあるが、おおむね計画通りに進行していると思われる。
前年度までの結果を基に、EBI3によるT細胞分化やオートファジー制御による増殖の調節機構の作用機序についてさらに検討する。(1) 腸炎誘導におけるEBI3によるT細胞分化制御の作用機序:前年度までの結果より、EBI3欠損T細胞ではIFN-g産生の低下と共に腸炎発症も抑制されていたが、この時p62/SQSTM1を介したオートファジーの関与は低かった。そこで、今年度は最近注目されている腸炎誘導に重要なTh17およびTh1/Th17細胞分化に重要なIL-23のシグナル伝達におけるEBI3の関与について検討を行う。IFN-g産生に必要な転写因子T-betやSTAT4の他、IL-23シグナルに重要なIL-12Rb1やIL-23R発現を調べ比較検討し、その作用機序を明らかにする。(2) 腫瘍形成や増悪化におけるEBI3によるオートファジー制御:昨年度までの結果より、EBI3の強制発現がp62/SQSTM1会合を介してオートファジーを亢進し、腫瘍増殖を促進している可能性が示唆された。そこで、まずオートファジー誘導の初期段階に重要なATG5およびp62/SQSTM1をsiRNAでノックダウンした場合の細胞増殖とオートファジーの程度を比較検討し、その作用機序について明らかにする。また、p62/SQSTM1の欠失変異体を用いたEBI3との会合実験より、p62/SQSTM1のどの機能的領域がEBI3との結合に関わっているかを決め、その作用機序を検討する。
昨年度の若干の未使用金は、最終的に交付金額と同額に端数を合わせることが難しいため、次年度への繰越金とした。昨年度の若干の未使用金と次年度の交付金額を合わせた全ての経費は、本研究遂行に必要なマウスや抗体、試薬、培養器具などの消耗品代に充てる予定である。
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