ストレス性精神障害がパーキンソン病の発症および病勢の進行に関与するとの仮説のもと,マウス線条体ドパミン神経のストレス脆弱性について検討を進めている。今回は,ストレス性精神障害であるうつ様症状を呈する水侵拘束ストレス負荷マウスにおいて,パーキンソン病誘発神経毒MPTPの線条体ドパミン神経に及ぼす影響を検討した。その結果,線条体ドパミン神経の特異的な変性脱落が認められたことから,MPTPに対する感受性が増大する可能性が示唆された。これまで,様々なストレス負荷条件において,線条体ドパミン神経のMPTPに対する脆弱性の形成が確認されたが,未だその機序は明らかでない。そこで,脆弱性形成機構を解明することを目的とし,ドパミン神経終末の機能評価系の確立を試みた。具体的には線条体由来シナプトソームにおいて,小胞型モノアミントランスポーターの基質であるfluorescent false neurotransmitter (FFN)102の取り込みについて検討した。前頭皮質および小脳由来シナプトソームに比べ,線条体ではFFN102の蛍光強度の増加が認められた。また,線条体由来シナプトソームにおけるFFN102の蛍光強度の増加は,ドパミントランスポーター阻害剤であるGBR-12909により抑制された。したがって,線条体シナプトソームにおいてFFN102はドパミン神経終末の機能評価に有用である可能性が示唆された。線条体ドパミン神経シナプトソームの機能評価法は,ドパミン神経終末の脆弱性形成評価に有用であるだけでなく,変性脱落の予防法確立にも応用できると考えている。
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