研究課題/領域番号 |
24790097
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
位田 雅俊 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (70512424)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エズリン / モエシン / ラディキシン / パーキンソン病 |
研究概要 |
エズリンは、スキャホールドタンパク質であり、ラディキシン、モエシンと共にERMタンパク質ファミリーに含まれる。中枢神経系において、エズリンの生理的や、病態生理的機能は不明である。本研究では、エズリンと中枢神経との関連性や生理機能を解明し、脳環境でも検証することで、臨床応用へと展開するため基盤研究を確立することを目的としている。初年度は、特にこれまで不明な点が多く残る神経細胞におけるエズリンの生理的機能について以下のことを明らかにした。8週齢のWTマウスにおけるエズリンの発現分布を調べ,大脳皮質や海馬など高次機能を司る部位においてエズリンが高発現すること。EKDマウスの大脳皮質について形態解析を行った結果,錐体細胞において先端樹状突起の長さが野生型と比較して約20%短いこと,基底樹状突起の数が少ないという神経突起の形成異常を明らかにした。 WTマウスの大脳皮質神経細胞培養(培養1日目)におけるエズリンの発現を解析した結果,神経突起が形成されていない段階(ステージ1),未成熟な神経突起が伸長している段階(ステージ2)の神経細胞でエズリンが発現しており,フィロポディアや成長円錐においてアクチンフィラメントと共局在することを確認した。軸索が形成される段階(ステージ3)においては発現が減少しており,エズリンの発現が時間経過に伴って減少することを確認した。ラディキシンとモエシンは逆に時間経過に従って増加する傾向にあることを観察した。さらに,EKDマウスの大脳皮質神経細胞について形態解析を行った結果,神経細胞(培養2日目)において神経突起の数が少なく,軸索の長さが約10%減少していることが確認された。本成果では、発達初期の段階で神経細胞にエズリンが発現すること、また、エズリンが神経細胞の形態形成,とりわけ神経突起の生成に重要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果として、以下の中枢神経におけるエズリンの生理機能を見出した点において順調に伸展していると考えている。8週齢のWTマウスにおいて、大脳皮質や海馬など高次機能を司る部位においてエズリンが高発現すること。EKDマウスの大脳皮質について形態解析を行った結果,錐体細胞において神経突起の形成異常を明らかにしたこと。WTマウスの大脳皮質神経細胞培養におけるエズリンの発現を解析した結果,神経突起が形成されていない段階や未成熟な神経突起が伸長している段階の神経細胞でエズリンが発現しており,フィロポディアや成長円錐においてアクチンフィラメントと共局在することを明らかにした。また、軸索が形成される段階においては発現が減少しており,エズリンの発現が時間経過に伴って減少することを明らかとした。一方で、他のERMタンパク質であるラディキシンとモエシンは、逆に時間経過に従って増加する傾向にあった。さらに,EKDマウスの大脳皮質神経細胞について形態解析を行った結果,神経細胞(培養2日目)において神経突起の数が少なく,軸索の長さが約10%減少していることが確認された。今後、さらにドパミン受容体やドパミントランスポーターとの関連も詳細に検討する予定である。 一方で、EKDマウスの行動解析、パーキンソン病モデルマウス、LRRL2遺伝子改変マウスにおける解析の伸展が遅く、早急に対応していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に従って、さらに現状を鑑み、以下のように研究を遂行していく。 初年度は、中枢神経におけるエズリンの生理機能をEKDマウスを用いて、in vivoやin vitroにおいて解析を行った。本年度はさらに、他のERMファミリータンパク質であるラディキシン遺伝子欠損マウス(RKOマウス)やモエシン遺伝子欠損マウス(MKOマウス)を用いて、解析をすることで、より詳細な中枢神経におけるエズリンの生理機能の解析、さらにはERMタンパク質全体の解析が可能となる。また、申請書にあるように、ドパミン受容体やドパミントランスポーターとの関連性も免疫沈降法やFRET解析を用いて詳細に検討する予定である。また、神経細胞だけではなく、ミクログリア、アストロサイトを EKDマウスの行動解析については、EKDマウスが解析できるまでに繁殖してから直ぐに解析を始める。また、直ぐにでもパーキンソン病態におけるエズリンの影響を解析が開始出来るように、ドパミン神経毒であるMPTPを用いたパーキンソン病モデルマウスを作成し、病態脳におけるエズリンの機能を解析する。すでに、MPTPマウスの黒質において、障害早期にエズリンが増加することを確認しており、大変興味深い知見を得ている。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書の計画に基づき、予算を執行していく。本研究の予算は、in vitro系とin vivo系を含めた分子生物学的解析、生化学的解析、組織化学的解析および薬理学的解析に必要な消耗品代が殆どである。本研究に必要な設備は、本学所属研究室および本学共同利用機器室に現有し、常時稼動しており、直ちに実験を開始できる状況にある。従って、設備備品費は計上していない。また、本研究を遂行するに当たり、得られた研究成果を関連国際学会などで発表するため、国内および海外の旅費を計上した。その他、研究成果発表のための投稿料などの必要最小限の経費を除いて、ほとんどが試薬などの実験消耗品費に当てる。
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