研究課題/領域番号 |
24790098
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
中山 和彦 神戸薬科大学, 薬学部, 助手 (70584738)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エンドセリン変換酵素 / 糖尿病性腎症 / 糖尿病性心筋症 / ブラジキニン / 心房性ナトリウム利尿ペプチド / アドレノメデュリン |
研究概要 |
糖尿病ECE-1欠損マウスの心・腎機能評価 (in vivo):ECE-1ヘテロ欠損マウスを、ストレプトゾトシン腹腔内投与によりType1糖尿病モデルを作成し、心筋症・腎症の程度を心エコー、尿中アルブミン定量により経過観察した所、糖尿病発症2ヶ月、4ヶ月、8ヶ月においてWTマウスに比較してKOマウスで有意な心機能保持(2か月時点以降より)と尿蛋白漏出抑制効果(4か月時点以降より)が確認された。 メカニズム解析のため、心臓・腎臓での組織学的解析を行い、両臓器で共に線維化(Silius Res染色)と炎症(CD68免疫染色)の程度がECE-1ヘテロ欠損マウスにおいて野生型に比べて有意に抑制されていた。現在、さらに電子顕微鏡を用い、心筋サルコメアの構造や糸球体上皮細胞間のスリット構造の観察を行って、糖尿病による組織破壊の程度をより詳細に観察中である。 また酸化ストレスの定量として、ルシゲニンアッセイを用い腎臓における活性酸素量の定量を行うと、糖尿病で著明に増加する活性酸素がECE-1ヘテロ欠損マウスにて有意に抑制されていたという結果を得ている。 また血管作動性ペプチドのプロファイル解析として、ELISAにて心組織中のエンドセリン-1ペプチドの定量を行ったが、ECE-1ヘテロ欠損マウスで約30%程度低下しており、エンドセリンの増加を抑制する事で、炎症・線維化の病態進行が緩和され、同時に活性酸素産生抑制が臓器保護の機序として推察される。現在さらに押し進めてエンドセリン-1以外にも関与が推察される、ブラジキニン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、アドレノメデュリン、アンギオテンシン1-7のペプチド量をELISAにて検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルマウスの作成は順調に行っており、現在糖尿病2,4,8か月目のサンプル採取を完了した。当初予定していた組織学的検討や各種遺伝子解析を現在解析しており、予想通りの結果を得るに至っている。表現型の解析作業は順調にこなせていると考えているが、機序解析の段階で、今回我々が最も着目している生理活性ペプチドの定量作業がELISAキットの感度の問題で時間が予想よりかかってしまっている現状である。血清、心臓、腎臓におけるエンドセリン-1ペプチド量の定量は比較的スムーズに完了したが、ブラジキニン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、アドレノメデュリン、アンギオテンシン1-7ペプチドは使用しているELISAキットの感度の問題で定量に難渋している。現在、各社のELISAキットを使用し最適条件を検討しており、最適条件が発見出来次第、保存してある各種サンプルの定量を行いたいと考えている。現状では本実験に使用しているECE-1ヘテロ欠損マウスは予想通りの心保護、腎保護作用を有しており、今後の糖尿病心筋症・腎症への新規治療戦略と成る可能性がさらに高まってきたと実感しており、今後は詳細な機序解析に向けて細胞培養を用いたアッセイに実験の比重を移していく。現時点での自己点検としては交付申請書に記載した研究計画の約80%程度が実行できていると思われる。残りの実験期間をさらに有意義に過ごしたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroアッセイにより、ECE-1による各種基質ペプチド代謝産物の解析を行う予定である。HPLCによりペプチド測定のための条件検討を行っているが、感度の問題で各種ペプチドの定量に難渋している現状があるが、当大学の質量分析装置を用い定量を試みるつもりである。 対象基質ペプチドはbigET-1, BK(ブラジキニン), 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP, BNP, CNP), アンギオテンシン-I(AngI), アンギオテンシン1-7(Ang-(1-7)), アドレノメデュリン(ADM)であり、当初の予定通りそれぞれの基質をECE-1過剰発現細胞株と共培養する。 ECE-1により代謝された分解産物を精製後定量し、in vivoで測定された結果と一致するかを確認する。 上記と並行し、臨床応用への基盤整備として将来的に神戸大学医学部附属病院の治験倫理委員会に申請の上、同病院に入院中の糖尿病性心筋症・腎症の患者へのECE阻害薬(SM19712)投与による治験導入を計画してみたいが、まずは我々の得た結果を報告し神戸大学循環器内科(申請者出身教室)や製薬会社との協力体制を確立する方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度予定していた研究の進捗状況より若干のずれが生じ9,408円の繰越が生じ、本金額を加味した予定は次のとおりである。 各種ペプチド基質購入費 209,408円,細胞培養関連費400,000円,HPLC関連費100,000円 ELISAキット購入費600,000円,旅費(学会発表)300,000円を予定している。
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