研究課題/領域番号 |
24790099
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
中瀬 朋夏 (高谷 朋夏) 武庫川女子大学, 薬学部, 講師 (40434807)
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キーワード | 細胞死 / ストレス環境 / 乳がん / MCF-7 / 亜鉛トランスポーター |
研究概要 |
平成24年度では、ヒト乳がん細胞MCF-7は高濃度グルコースによるストレス環境に適応し、抗がん剤タモキシフェン耐性能を獲得することを見出した。乳がん細胞のストレス環境適応性は、細胞死制御機構と密接に関係して乳がんの悪性化に繋がる。本年度は、がん細胞の機能制御に重要な役割を果たすトランスポーターに焦点を当て、ストレス環境適応性を発揮するのに必要なトランスポーターを同定し、その細胞死制御機構との関わりを評価した。MCF-7を高濃度グルコース環境で24時間培養すると、亜鉛トランスポーターZIP6の発現量は増加し、それに伴い亜鉛イオンの取り込みも増加した。さらに、高濃度グルコース環境で7日間培養したMCF-7では、ZIP6の発現量は低下し、がん難治化の要因である低酸素耐性能とアポトーシス抵抗性を獲得した。さらに詳細にZIP6の役割を解析するため、ヒトZIP6を標的とするsiRNA発現プラスミドをMCF-7に導入し、ZIP6特異的ノックダウン安定細胞を作製したところ、低酸素環境条件下において、ZIP6ノックダウン細胞は、遺伝子導入していない野生型およびネガティブコントロール細胞と比較して、顕著に生存率が高く、非アポトーシス型細胞死の誘導を著しく抑制した。その機序として、ZIP6発現抑制を介した生存シグナル伝達因子Aktのリン酸化活性が必要であることを見出した。ZIP6の発現が減少すると、アポトーシスだけでなく非アポトーシス型細胞死にも抵抗性を示すことから、ZIP6は乳がん細胞の多様な細胞死を制御できる機能を有する可能性がある。現在、ZIP6による細胞死制御機構を明らかにするため、細胞内亜鉛と細胞死関連分子の細胞内動態を解析し、細胞内亜鉛ネットワークの解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、乳がんのZIP6発現量とその機能は、細胞死制御を介したストレス環境適応戦略の鍵を握ることを明らかにし、ZIP6は、これまで隠れていた乳がんプロセス及び重要な治療標的であることを見出した。しかし、産休の取得により、細胞死におけるZIP6の機能的意義を明らかにするまでには至らなかったため、次年度延長し、引き続き解析する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、乳がん細胞のZIP6による細胞死制御機構を明らかにするため、アポトーシスならびに非アポトーシス型細胞死における亜鉛の細胞内動態やオルガネラを介する細胞内ネットワークを検証し、担がん動物モデルを用いて、乳がんの悪性化とZIP6の役割を解明する。 1.細胞死シグナル伝達経路とZIP6制御機構 昨年度に引き続き、多様な乳がん細胞死機構におけるZIP6制御システムを検証する。まず、低酸素誘発細胞死において、亜鉛蛍光プローブを用いた細胞内亜鉛動態とGFP融合アポトーシス関連分子の細胞内動態から、細胞内ネットワークを明らかにする。また、ミトコンドリア局在化シグナルをコードする蛍光ベクター(pDsRed2-Mito Vector)を用いて、ミトコンドリアを可視化し、オルガネラとの関連も検証する。さらに、オートファジーを伴う非アポトーシス型細胞死において、蛍光タンパク質融合オートファゴソームマーカーLC3ベクター、蛍光タンパク質融合隔離膜伸長必須分子ATG5ベクターを導入し、共焦点顕微鏡によるリアルタイム観察によりオートファゴソ-ム形成を追跡することにより、ZIP6およびZIP6を介する亜鉛動態とオートファジー関連分子との関連性を評価する。 2.in vivo担がんマウスにおけるZIP6の役割 担がん動物モデルを作製し、ZIP6の制御と生存率の関係を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年7月5日に出産し、その産前産後休暇を武庫川学院就業規則第35条第1項第2号の規程にもとづき、同年6月21日から8月30日まで取得したため。 本研究を遂行するための実験施設・設備は完備しており、経費はベクター作製用試薬、ライブイメージング実験、細胞培養及び実験用プラスチック製品(共焦点顕微鏡観察用、フローサイトメトリー実験用、細胞毒性試験用)、実験動物、抗体等の消耗品購入に充てる。
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