研究課題/領域番号 |
24790101
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 雄一郎 安田女子大学, 薬学部, 助教 (60416427)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | レクチン / 抗インフルエンザウイルス活性 / 抗がん作用 |
研究概要 |
申請者らは、細菌Pseudomonas fluorescens PfO-1 より新規の糖結合蛋白質であるレクチン(PFL)の遺伝子をクローニングし、大腸菌でのリコンビナント蛋白質の発現および大量精製に成功した。Alexa488-PFLを用いたグリカンアレイ解析により、本レクチンは供試610糖鎖のうち、6種の高マンノース型糖鎖にのみ特異的に結合することが判明した。PFLの抗インフルエンザウイルス活性は、MDCK細胞に対する細胞障害(cytopathic effect: CPE)抑制効果により調べ、H3N2およびH1N1の亜型に対し、ナノモルオーダーで感染を阻害することを明らかにした。また、免疫蛍光抗体染色法により、PFL存在下においてはウイルス抗原が細胞内に局在しないこと、またELISA法によりPFLはウイルスのHAタンパク質へ直接結合することが明らかとなった。他方、PFLのクラミジアトラコマチスに対する効果は、クラミジアの標準測定法であるMIC測定法ならびにMLC測定法に準拠してHeLa229細胞を用いて調べたが、顕著な感染阻害効果は観察されなかった。PFLのin vitroにおける抗がん活性は、胃がん由来MKN28細胞を用い、細胞増殖抑制を指標に検討した。MKN28細胞上におけるPFLのターゲット分子を単離し、MALDI-TOF MSによるペプチドマスフィンガープリント(PMF)法により調べた結果、インテグリンα2であると同定された。興味深いことに、通常細胞表面に高発現しているインテグリンα2分子は、PFL処理後速やかに細胞内へとソーティングされ、再び細胞表面に現れることはなかった。また、蛍光標識PFLの挙動は完全にインテグリンα2の挙動と一致し、両者は細胞核周辺領域に共局在した。これらの結果は、PFLが細胞接着障害によるがん細胞死を誘導することを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、1年目には新規レクチン(PFL)遺伝子のクローニングと発現タンパク質の大量精製ならびに糖鎖結合性を調べることとしていたが、研究が順調に進捗したことから、次年度に計画していた抗ウイルス活性、抗クラミジア活性、抗がん活性について前倒しで研究を行った。また、PFLによる抗がん活性は、インテグリンを介したアノイキス様細胞死の誘導に起因するという興味深い知見が得られており、これらの結果を学会ならびに学術論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予測とは異なり、本レクチンの抗がん活性はアポトーシスの誘導や小胞体ストレスが主たる要因ではなく、インテグリン糖鎖との直接の相互作用により誘導されるインテグリン-レクチン複合体の内在化をトリガーとした、細胞接着障害に起因する細胞死(アノイキス様細胞死)によることが判明した。今後は、このがん細胞死の分子メカニズムについて、オートファジーなどとの関連も明らかにしつつ、さらに詳細に検討することとしている。また、従来の計画どおり、蛍光標識がん細胞系列を用いて、マウスの胃がんおよび大腸がんなどのモデル系を作製し、局所投与および経口投与によるレクチンの腫瘍抑制効果についてin vivoイメージングシステムにより解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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