研究課題
コレステロールは細胞膜の主要成分で、特にシグナル伝達に関わる脂質ドメイン(脂質ラフト)の形成と機能において、重要な役割を果たすと考えられている。コレステロールは、小胞体から細胞膜へ主に小胞輸送を介さずに輸送されるが、どのような分子が関与しているかは明らかでない。そこで本研究では、この輸送に関わる分子をスクリーニングし、その機構を明らかにすることを目的とした。平成24年度のスクリーニングでは、まず細胞表面のコレステロール量を減少させる化合物を顕微鏡観察により選別した。ヒット化合物の中から、小胞体で生合成されたコレステロールの細胞表面への輸送を阻害する化合物を取得した。平成25年度は、これら得られた化合物の類似構造化合物について、同様のコレステロールプローブを用いた顕微鏡観察および生化学的解析によるスクリーニングを行った。その結果、既に得ていた化合物よりも強い活性を示す化合物を得ることができた。ヒット化合物の標的分子を同定するために、細胞抽出液より化合物ビーズに結合するタンパク質をアフィニティ精製し、質量分析を行った。その結果、化合物に結合する候補分子を複数得ることができた。またこの化合物スクリーニングにより、細胞表面のコレステロール染色を減少させるが、コレステロールの生合成や細胞内輸送には影響しない化合物が2種類得られた。細胞表面コレステロールの量や状態を変化させる化合物は、ラフト解析に有用であることから、この化合物についての解析も進めていきたい。
2: おおむね順調に進展している
化合物ライブラリーのスクリーニングで得た化合物について、類似構造化合物のスクリーニングを行うことにより、より活性の高い化合物を得ることができた。またヒット化合物ビーズを用いたアフィニティ精製により、化合物に結合するタンパク質を得ることができた。
1.化合物に結合するタンパク質の発現をRNAiにより抑制し、コレステロールの細胞内輸送が阻害されるかを放射ラベル実験、プローブを用いた顕微鏡観察によって調べる。2.同定したタンパク質がどのようにコレステロール輸送に関与するかを明らかにする。人工脂質膜小胞を用いたin vitroコレステロール転移実験を行う。3.スクリーニングにより、細胞表面のコレステロール染色を減少させるが、コレステロールの生合成や細胞内輸送には影響しない化合物が得られている。この化合物がどのように細胞膜コレステロールの量や存在状態を変化させるのかを調べる。
平成25年度に行った実験では、所属する研究室の他の室員と試薬などを共有できることが多かったため、本研究費で購入予定の物品費が残り、平成26年度に繰り越すことになった。また平成25年度に参加した学会は横浜で開催されたため、旅費を使用しなかった。平成26年度は、主に実験を遂行するための物品費として予算を使用する。
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J Lipid Res
巻: 54 ページ: 2933-2943
10.1194/jlr.D041731