研究実績の概要 |
平成25年度に動物実験を用いたin vivoの検討で、thrombospondin-1(トロンボスポンジン-1, TSP-1)を代表とするシナプス新生促進因子が電気けいれん刺激により誘導される可能性を明らかにし、学術論文として受理された。電気けいれん刺激は、抗うつ薬に反応しない難治のうつ病治療においても有効性の高い電気けいれん療法の動物モデルである。 以上に基づき、うつ病の新規治療標的分子としてTSP-1の可能性を検証するため、平成26年度は、ヒト血液サンプルを用いて、TSP-1の測定を行った。 研究協力者の支援により、文書による説明と同意を得た精神疾患の電気けいれん療法施行患者および年齢と性別について統制された健常者から血液を採取した。匿名化かつ患者情報がブラインド化された状態で血中TSP-1をELISA法を用いて測定した。健常者群と患者群での血中TSP-1値を比較した。また、患者群においては、電気けいれん療法施行前後での血中TSP-1値の変化を解析した。その結果、血中TSP-1値は健常者に比べ、患者群の特に女性において低い傾向にあった。ただし、本研究の解析の限りでは電気けいれん療法の施行に伴う血中TSP-1値の有意な変化は見られなかった。今後は、例数の追加や他のシナプス新生関連因子の測定、可能であれば抗うつ薬未服薬で電気けいれん療法施行の患者サンプルの解析などが必要になると考えられる。
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