研究課題
近年ヒトとウィルスの戦いは複雑になり疾病構造が大きく変化しつつある。この変化に対応するために、ペプチド性医薬品の需要が著しく高まっているものの、ペプチドが有する加水分解性や凝集性など問題となり、医薬品への直接展開は困難を極めている。これら問題を解決すべく、本研究では、アルケン型ジペプチドイソスターに軸足をおいた創薬研究を行い、ペプチドリード創薬を強力に推進するペプチドミメティックの創出を目的とする。本年度の研究では、前年度に見出したクロロアルケン型ジペプチドイソスター(以下、CADI)の合成法の高度化に取り組み、以下の成果を得た。昨年度の検討によって、γ位に二つの塩素原子を有する(E)-α,β-不飽和エステルに対し、有機銅試薬を作用させることで、δ位の不斉点に由来する1,4-遠隔不斉誘起によってジアステレオ選択的なアリル位アルキル化反応が進行し、trans-アミド結合を模倣したCADIが得られることを見出した。しかし、X線結晶構造解析の結果から、得られたCADIは非天然アミノ酸に相当する(L,D)型であり、様々な生理活性ペプチドに応用するには、(L,L)型CADIの合成法を開発する必要がある。そこで、高ジアステレオ選択的に進行する本反応の特徴に着目し、幾何異性体である(Z)-α,β-不飽和エステルを新たに合成し、同様に有機銅試薬を作用させたところ、期待した通り(L,L)型CADIが得られることを見出した。さらに、有機亜鉛試薬をアルキル源とすることで、一般的には困難とされるアリル基や嵩高いアリール基の導入も可能となり、目的とする(L,L)型CADI類が高収率および高立体選択的に得られることを見出した。また、本反応で得られるジアステレオ選択性について検討した結果、γ位の二つの塩素原子とδ位の不斉点との立体反発がジアステレオ選択性発現に大きく寄与していることが示唆された。
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