研究課題
ラット由来マスト細胞RBL-2H3に対する細胞表面IgEレセプターの発現抑制評価系を用いて、生薬ソヨウのメタノール抽出エキスから見出した活性物質「pheophorbide a」について、有機化学的手法を加えてメチル化体、エキソオレフィン還元体を調製した。しかしながら、これらの活性はpheophorbide aを上回るものではなかった。一方、市販品として入手可能なpheophorbide aの類似化合物であるchlorin e6が、より強力なIgEレセプター発現抑制活性を示した。そこで、chlorin e6を用いてin vivoの検討を進めた。まず、昨年度確立したラット腹腔浸潤液よりマスト細胞を得る方法についてプロトコルを最適化し、本方法によって得られるマスト細胞に発現しているIgEレセプター量を評価した。生薬ソヨウのメタノールエキスあるいはchlorin e6を経口投与した場合に、IgEレセプター発現量が有意に減少していることが確認された。また、1日の単回投与より、2日連続で合計2回投与した方が抑制効果が大きかった。この際、体重減少や下痢、脱毛等の毒性や副作用は認められなかった。さらに、I型アレルギーのモデルといわれているPCA反応について検討した。本反応は、IgEを皮内投与して感作させたのち、抗原と色素を静注することで感作させた箇所にアレルギー反応を起こし、その結果として色素の浸潤が認められる反応である。IgEの皮内投与に2日先んじてchlorin e6を経口投与し、抗原と色素の静注まで4日間連続で投与を続けてPCA反応の結果を検証したところ、10 mg/kgの投与量で約40%の色素浸潤抑制が認められた。この結果によって、IgEレセプターの発現抑制が抗アレルギーに繋がることを示すと共に、chlorin e6がラットに対して抗アレルギー作用を持つことが示された。
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ACS Medicinal Chemistry Letters
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