研究課題/領域番号 |
24790111
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐能 正剛 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 助教 (00552267)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 薬学 / 薬物代謝 / 肝細胞 / 3次元培養 |
研究概要 |
医薬品開発において、ヒトにおける医薬品の代謝物の生成、およびその毒性を予測する必要性が高まってきている。細胞培養を改良した「3次元培養法」は、in vivoに近い形で、長期培養できることが期待される。このことから、肝細胞を3次元培養することで、医薬品の代謝、毒性予測評価を精度よく、効率的に行える可能性がある。そこで、本研究では、細胞が均一に3次元構造を形成できるよう工夫されている「Micro-Space Cell CulturePlate」を用い、肝細胞3次元培養系による医薬品の代謝に伴う肝障害の予測性を検証することを目的とした。 平成24年度は、解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンを用いて、3次元培養系における肝毒性評価法の構築を行った。アセトアミノフェンは、大量摂取によって重篤な肝障害を引き起こすことが知られている。これは、生体内の薬物代謝酵素チトクロームP450 (CYP)による代謝的活性化による肝毒性が報告されている。3次元培養系において、各CYPの発現を確認できたことから、アセトアミノフェンを代謝的活性化に伴う肝毒性評価を行うバリデーション化合物として用いた。アセトアミノフェンを3次元培養系に曝露後、細胞中ATP濃度は減少した。また、CYP阻害剤を加えることで、その細胞毒性は一部軽減がみられた。このことから、アセトアミノフェンのCYPによる代謝的活性化による毒性を確認できたと考えている。さらには、生細胞や細胞内グルタチオンを認識する蛍光プローブを添加し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、その代謝的活性化による毒性を可視的に評価した。その結果、アセトアミノフェンの代謝的活性化による細胞毒性は細胞内グルタチオン量の枯渇によることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、最初の検証化合物としてアセトアミノフェンを用い、CYPによる代謝的活性化にともなう肝毒性評価を3次元培養系を用いて行った。本研究の主要ポイントとしていた蛍光プローブを用いた細胞内における毒性を可視化し、定性のみならず定量的に評価することもできた。また、次のステップとして、細胞塊(スフェロイド)に検証化合物を曝露の組織切片の作成準備や、CYP以外の他の薬物代謝酵素で代謝的活性化され肝毒性を示すことが知られる化合物についても評価を行い、次年度に向けた研究準備も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、検証化合物としてアセトアミノフェンを用いて3次元培養を用いた肝毒性評価のバリデーションを行った。次年度は、評価化合物をさらに増やして本評価の有用性を高めていきたい。とくに、3次元培養系においてグルクロン酸抱合酵素の発現量が高く維持されていることも分かり、本酵素が関与する代謝的活性化による毒性評価に集中していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き、物品試薬として、評価化合物やその代謝物の標品、細胞培養に必要な試薬、毒性を検出する蛍光プローブ、動物(ラット)購入費などに充当する予定である。
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