研究課題/領域番号 |
24790112
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
塚本 宏樹 佐賀大学, 医学部, 助教 (70423605)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | TLR4 / MD-2 / リポ多糖 / モノクローナル抗体 |
研究概要 |
本研究では、新規抑制抗体HT52が認識するヒトToll-like receptor 4 (TLR4)上の抑制性エピトープを同定、その抑制機序を解明し、新規作用機序によるTLR4機能制御法・制御薬開発の分子基盤を構築することを目的とした。 今年度は、HT52抗体の抑制効果を、lipopolysaccharide (LPS)刺激によるサイトカイン産生(TNF-alpha, IL-6, IL-12)、補助刺激分子CD86の発現亢進、NF-kappaB等のシグナル伝達分子の活性化を指標に、末梢血単核球やトランスフェクタント細胞、U373細胞で解析し、いずれの場合においても強い抑制効果を示すことを明らかにした。 独自に作製したCD14機能阻止抗体とHT52抗体の併用効果を予備的に解析したところ、協調的な抑制効果が示唆された。 TLR4細胞外領域のLRR欠損体に対する反応性を検討し、HT52抗体が認識する細胞外制御領域がN末端50-190アミノ酸付近に含まれることが示唆された。現在、抑制性エピトープの詳細な解析を進めている。 HT52抗体によるTLR4抑制機序について解析し、その作用点がLPSとMD-2の結合阻害ではなく、TLR4インターナリゼーションの抑制であることを明らかにした。現在、LPS結合誘導性のTLR4二量体化に対する影響を検討中である。 TLR4欠損マウスを免疫して作製したモノクローナル抗体群のうち、HT52とは全く異なる抗原認識を示すが、同等の強い抑制効果を持つ抗体、HT4を樹立することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能抑制抗体HT52の抑制効果について、LPS刺激によるサイトカイン産生(TNF-alpha, IL-6, IL-12)、補助刺激分子CD86の発現亢進、NF-kappaB等のシグナル伝達分子の活性化に対して強い抑制効果を持つことを明らかにすると共に、CD14抑制抗体との併用による協調的抑制効果の可能性を示し、本抗体が新規のTLR4機能抑制薬として有用であることを示すことに成功した。 また、抑制機序の解析についても、少なくとも一部のメカニズムはTLR4インターナリゼーションの抑制によることを見いだした。 このように抑制作用とその作用機序について、順調に成果が得られている。 抑制性エピトープの同定はN末端アミノ酸50-190まで絞り込むことに成功し、更なる解析に必要なTLR4細胞外領域欠損体の発現コンストラクトの構築も一部は完了した。 このように研究は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
HT52抗体によるTLR4抑制機序の解析を昨年度から継続して行う。特に、LPS誘導性の二量体化については、作用点の候補と考えられるため、重点的な解析を行う。 更に、抑制性エピトープをLRR単位で絞込みを進め、アラニンスキャンニングによる詳細なエピトープ解析を行う。 TLR4細胞外領域の抑制性エピトープを認識する、さらに強力な抑制型モノクローナル抗体の作製を試みる。 HT52抗体に加え、全く抑制エピトープが異なるHT4抗体が得られたので、本抗体についても抑制効果、エピトープ、抑制メカニズムについて、HT52抗体の解析で使用した実験系で解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を実施する所属研究室を異動することになったため、今までの実験を継続、推進するための分子生物学的試薬、細胞生物学的試薬、生化学的試薬、プラスチック器具を中心に研究費を使用する予定である。また、抗体精製に必要なクロマトカラム・担体の購入費に使用する。 本年度は、TLR4細胞外領域の抑制性エピトープを認識する、さらに強力な抑制型モノクローナル抗体を作製するため、実験動物の購入、維持の費用に充てる。 更に、本研究の成果を発表するための、学会参加費用、論文発表費用に使用する。
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