NSAIDの作用に関しては我々は、アポトーシス誘導能を持つ転写因子CHOP、熱ショック蛋白質(HSP)、小胞体シャペロン(GRP78など)、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)などの発現がNSAIDsにより誘導されることから、NSAIDsが持つ多彩な薬理作用についても様々な遺伝子の発現が誘導されていることを示唆した。そこで、NSAIDsによる遺伝子発現変化が、NSAIDsの多彩な薬理作用にどのように関与しているかを調べた。具体的には、これまでに我々が確立してきたそれぞれの薬理作用に関するアッセイシステムを用いて、抗癌作用と抗アルツハイマー作用に関する遺伝子の発現変化を調べた。その結果、抗癌作用に関してはNSAIDsによるアポトーシス誘導と足場非依存的増殖の抑制において特異的に発現する遺伝子を見出した。一方、抗アルツハイマー作用に関してはβアミロイドの産生とβアミロイドによる神経細胞死において特異的に発現する遺伝子を見出した。 DNAチップ解析等により決定したターゲット遺伝子の発現変化作用が強いものを、我々が構築しているNSAIDs既存薬ライブラリー(128種)の中から抽出した。さらに、発現変化に必要な絶対的な濃度だけでなく、細胞毒性に比べより低い濃度で発現変化させる化合物を厳選した。選択したNSAIDについては、マウスに投与しターゲット遺伝子の発現変化を調べ、胃潰瘍副作用の少ない既存NSAIDs、抗炎症・抗癌・抗アルツハイマー作用の強いNSAIDs既存薬を同定した。
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