研究課題
癌において発現上昇し、酸化ストレス防御機構として機能するNrf2誘導性のaldo-keto reductases (AKR) の機能及び発現を制御する新規制癌薬候補物質の探索を最終目的として、以下の点について研究を行った。まず、AKR1B10酵素の阻害剤の探索を行った。初年度に見出したクロメン誘導体のドッキングモデルを元に誘導体を合成し、初年度に合成したものを加え、全97化合物の構造活性相関を行った。中でもKO79は阻害定数Ki値が1.3 nMとこれまでに報告されている中で最も強力なAKR1B10阻害効果を示した。本化合物は細胞レベルでもAKR1B10の還元活性を有意に阻害し、肺癌細胞の増殖能を抑制した。一方で、構造類似酵素であるアルドース還元酵素 (AR) との選択性は5倍程度までしか上昇せず、さらなる検討が必要である [Bioorg. Med. Chem.に発表]。また、AKR1B10安定発現A549細胞の作製に成功した。AKR1B10は食品添加物のキノン代謝物を還元解毒する。この細胞においてキノン代謝物の還元能が有意に亢進し、毒性が軽減された。今後はこの細胞を用いてAKR1B10阻害剤の効果を検討するとともに、この細胞を導入した担癌マウスを用いた評価を行う予定である。次に、初年度にAKR1C3阻害剤として見出したバッカリン誘導体の細胞レベルでの有効性について評価した。AKR1C3を恒常的に過剰発現する肺癌A549細胞におけるステロイドの代謝をバッカリン誘導体は有意に抑制した。また、本化合物は前立腺癌細胞だけでなく白血病細胞の増殖能も有意に抑制したことから、アンドロゲン合成のみならず、AKR1C3による増殖抑制系プロスタグランジン類や4-hydroxy-2-nonenalなどの反応性アルデヒドの生成抑制効果の阻害を介しても癌細胞の生存や増殖を制御していると考えられた。
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