研究課題/領域番号 |
24790116
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山下 光明 近畿大学, 農学部, 講師 (20433641)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヘテロ環縮合キノン |
研究概要 |
本研究は、次の3点を研究の柱とし研究を進めている。(1)金属触媒を用いた多置換ヘテロ環縮合ナフトキノン類の効率的合成法の開発、(2)合成ヘテロ環縮合キノン類を用いた還元酵素特異的基質の探索、(3)還元酵素特異的基質を用いた医薬品などの有用分子の開発、である。インドールキノン化合物を含めたヘテロ環縮合ナフトキノン類の直接的効率的合成法は、あまり知られておらず現在もなお挑戦的課題であった。そこで2つの方法論を用いて効率的合成法の開拓を行うこととした。まず初めに、キノンの特性を活かしたヘテロ環縮合キノンの一挙構築法の開発を行った。すなわち、ジメチルアミノ基とアルキニル基をキノンに事前に導入した基質を用いることで、ヘテロ原子の導入、閉環・置換反応のタンデム型反応をワンポットで行うことが出来ると期待した。検討の結果、アンモニア水溶液あるいは一級アミンで処理するとタンデム型付加脱離/分子内環化反応が進行し、対応するインドールキノン体の合成を効率的に行うことができた。本反応はジメチルアミノ基部分を酸素,窒素,硫黄官能基で置き換えた後に閉環反応を行うことで,1つの基質から様々なヘテロ環を有する誘導体合成が可能であり有用な反応である。しかしながら、インドールキノンの3位炭素官能基の導入が成功しておらず、現在のところ改善の余地がある。そこで、3位炭素官能基の導入を実現するために多少の工程数の増加にはなるが、アルキニル化アニリン誘導体を基質に用いて金属触媒を用いたタンデム型閉環・置換反応の検討を行った。現在までにインドール骨格の3位にシアノ基を温和な条件で導入する反応開発に成功している。本化合物がインドールキノン化合物へ誘導可能か現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述のように本研究は以下の3点を研究の柱としている。(1)金属触媒を用いた多置換ヘテロ環縮合ナフトキノン類の効率的合成法の開発(2)合成ヘテロ環縮合キノン類を用いた還元酵素特異的基質の探索(3)還元酵素特異的基質を用いた医薬品などの有用分子の開発である。このうち現在までに(1)の効率的合成法の検討を行っている段階であり、いまだ開発途中段階であるといえる。そのため計画はやや遅れている。しかしながら、反応検討においていくつか化学的に興味深い研究結果を得ており、今後の進展が期待できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
多置換ヘテロ環縮合ナフトキノン類の効率的合成法の確立を成し遂げた後に、以下の2つの研究を推進していく計画である。 (1)合成ヘテロ環縮合ナフトキノン類を用いた還元酵素特異的基質の探索-抗がん剤候補化合物であったEO9の開発研究において、置換基により、酵素特異性が大きく変化することが報告されている。その報告によれば、インドールキノンの2位置換基は、DT-diaphoraseに対する酵素特異性に影響を与える効果が大きく、3位置換基はDNAのアルキル化に影響を与える効果が強い。これらの効果をヘテロ環縮合ナフトキノン類でも再検証する。これらの化合物上に様々な置換基を導入して、疎水性、電子密度、立体構造等を変化させることで、有益な情報が得られるものと期待している。酵素特異的分子を見出したのち、がん細胞の成長抑制効果の調査を行うが、成長抑制効果が低くても次に示すようなプロドラッグ開発などの有用分子への展開を行うことができる。 (2)開発した化合物の有用化合物への展開-抗体治療薬や検査薬への展開を行う。すなわち、キノンアルキル化部位を抗体結合部位としてとらえるものである。最近、抗体に放射性同位元素(RI)を結合したRI標識抗体による治療(放射免疫療法)や検査薬が注目されている。これらを実現するうえで、抗体へのキレート剤の導入が必要であり、生理的条件下かつ迅速に抗体と結合する必要があるなどの困難が伴う。開発したインドールキノン化合物を用いればこのような課題を克服できると期待できる。還元剤存在下、抗体結合能の検討を行う。抗体を過剰に用いたり、副生成物や試薬除去を必要としない方法論を開発することで、臨床現場でも簡便に使用できる方法論を開発したい。また、キノンアルキル部位を医薬品放出部分とみなし、がん細胞特異的に化合物を放出する分子の開発を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
反応の検討を円滑に行うため、大量の反応の実施・処理・解析が必要となる。そのため、一度に大量の反応実施を可能とするパーソナル有機合成装置、解析を可能とする構造解析に必要なソフトなどの購入が不可欠である。また、合成研究の効率的遂行と酵素特異的基質探索のための反応試薬、酵素類、ガラス器具、プラスチック類のよりいっそうの補充が必要となる。本研究課題に関して、研究成果を日本薬学会第134年会(熊本)及び国際会議にて成果発表を行う予定である、そのため旅費が必要となる。
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