研究概要 |
本研究は、次の3点を研究の柱とし研究を進めている。(1)金属触媒を用いた多置換ヘテロ環縮合ナフトキノン類の効率的合成法の開発、(2)合成ヘテロ環縮合キノン類を用いた還元酵素特異的基質の探索、(3)還元酵素特異的基質を用いた医薬品などの有用分子の開発、である。インドールキノン化合物を含めたヘテロ環縮合ナフトキノン類の直接的効率的合成法は、あまり知られておらず現在もなお挑戦的課題であった。本年度は3位炭素官能基の導入を実現するために、アルキニル化アニリン誘導体を基質に用いて金属触媒を用いたタンデム型閉環・置換反応の検討を行った。本研究を始める前にインドール骨格構築法として知られているオルトアルキニル化アニリンのタンデム型環化/置換反応に関して文献調査を行ったところ、銅塩のみを用いた3位置換インドール合成反応はごく少数しか知られていないことが明らかとなった。Pyneらは、CuCNを触媒とした環化/シアノ化反応による3位シアノ化インドール合成を(J. Org. Chem. 2010, 75, 3412.)、Shenらの報告では、2価の銅塩を用いた3-ハロゲン化インドールの合成を(Adv. Synth. Catal. 2009, 351, 3107.)報告しているが、これらの方法は、実用的な部分で問題を有する。我々の検討の結果、空気雰囲気下、o-アルキニル化アニリンと化学量論量の銅塩を用いて反応を行うと、非プロトン性極性溶媒とカンファースルホン酸などの添加物によって反応成績体の割合が大きく異なることが明らかとなった。現在までにインドール骨格の3位にシアノ基を温和な条件で導入する反応開発に成功している。また、本反応を検討している途中で興味深いことに、インドール類のベンゾキサジノン類への効率的変換反応を見出すことができた。
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