研究概要 |
本研究は、リパーゼ触媒を用いた1,3-ジオール誘導体の非対称化反応を利用して、創薬資源として有用なβ-位にヘテロ原子が結合したα,α-二置換α-アミノ酸誘導体の効率的かつ汎用的手法を開発するものである。平成25年度は前年度に続き糖尿病治療薬の候補化合物であるラニレスタットの実用的合成法の開発を目的に研究を進めた。残していた2工程の合成を完了し、文献報告例と同じ合成共通中間体へと導くことができた。旋光度測定により絶対立体配置を調べた結果、望む(R)配置であることがわかり、ラニレスタットの形式合成を達成した。16工程通算収率は11.2%であり、合成共通中間体の光学純度はHPLC分析によって99%ee以上であることがわかった。化学収率・光学収率ともに従来法と比べて遜色のない、新しい効率的合成手法である。 ところで、キラルなα-メチルセリンのヒドロキシメチル基およびアミノ基を環化させて得られる環状スルファミデートは、β位の酸素原子を求核的反応によってそれ以外の原子(硫黄、窒素)に変換できる例が知られている。従って、キラルなα-メチルセリンはα-メチルシステインおよびβ-アミノ-α-メチルアラニン誘導体の合成前駆体になる汎用性の高い化合物である。そこで、キラルなα-メチルセリンの実用的合成法の開発を目的に研究を進めた。工業的に入手可能な2-アミノ-2-メチル-プロパン-1,3-ジオールから出発し、リパーゼ触媒による非対称化反応によって不斉炭素を構築し、N-Cbz O-アセトキシα-メチルセリンの(R)体を99%ee以上で得ることに成功した。クロマトグラフィー精製を回避し、実用面に優れた手法を確立した。 本研究内容に関連して、ヘテロ環化合物(ジヒドロピリミジン誘導体)の新規合成法の開発、微生物由来酵素の反応活性に関する研究も同時に進めた。
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