研究課題/領域番号 |
24790123
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
榊原 紀和 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (10441594)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 2クロル炭素環オキセタノシンA / COA-Cl / 血管新生促進作用 / 構造活性相関 / 核酸類縁体 |
研究概要 |
我々は新規に合成した核酸類縁体である2クロル炭素環オキセタノシンA (2-Cl-C.OXT-A 、通称COA-Cl(コアクロル))に強力な血管新生促進作用があることを明らかにしている。COA-Clは、化学的に非常に安定で、そのプリン骨格の2位にクロル基、9位に炭素から成る4員環が結合したユニークな構造をしており、低分子化合物(分子量284)としては唯一、血管新生促進作用を示す物質である。この点が注目されCOA-Clは、2010年に和光純薬工業(株)より新規血管新生促進剤として市販されている。 すなわち、これからCOA-Clに関する研究がさらに活発となることが予想されるが、基礎研究において検討すべき問題が残されており、臨床に応用するには課題が多い。例えば、COA-Clの作用機序に関しては、不明な点が多く、COA-Clを上回る活性を有し、且つ低毒性なCOA-Cl類縁体の創製に関する研究も重要となる。 当該年度は、COA-Clを上回る活性を有し、且つ低毒性なCOA-Cl類縁体の創製に関する研究を行った。その嚆矢として、COA-OR(コアアルコキシ)、すなわちCOA-Clのプリン骨格の2位のクロル基の代わりに、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)を結合させたCOA-Cl類縁体の化学合成および活性評価にを行った。その結果、プリン骨格の2位にメトキシ基が結合したCOA-OMe(コアメトキシ)あるいはCOA-iPr(コアイソプロポキシ)においては、それぞれ100μMの濃度において、ポジティブコントロールであるVEGFを上回る血管新生促進能が認められられた。しかしながら、COA-Clの活性と比較すると、その半分程度であるので、今後、COA-Clに関する構造活性相関も踏まえてさらなる検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の目標は、以下の二つを掲げた。 i) (±)- COA-Clの光学分割および光学活性体それぞれの血管新生促進作用の検討。 ii) COA-Clへ各種官能基を導入することにより、血管新生促進作用をさらに向上させる。 今回、目標ii)において、COA-Clと同様の血管新生促進作用を有する類縁体の合成に成功した(COA-OR)。これら類縁体の合成をさらに推進することで、より高活性で低毒性なCOA-Cl誘導体の創製を目指してゆきたい。一方、目標のi)に関しては、まだ検討していないが、現在その不斉合成の経路について検討中である。この課題に関しても、今年度なるべく早い期間に到達させたい。
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今後の研究の推進方策 |
プリン骨格2位にフッ素、臭素、ヨウ素、チオメトキシ基等が結合した生理活性物質が種々知られていることから、COA-Cl類縁体としてCOA-X(X = F, Br, I等)の合成を検討する。また、硝酸エステル(ONO2)は、生体内で代謝を受け一酸化窒素(NO)のドナーとなることが知られている。このNOに血管新生促進作用があると報告されていることから、血管新生促進の相乗効果を目的として、プリン骨格の2位がニトロオキシアルコキシ化されたCOA-Cl類縁体の合成も行う。 さらに、現在その不斉合成の合成経路について検討中である。この課題に関しても、今年度なるべく早い期間に到達させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画に関しては、消耗品、英文校正代、論文投稿料および関連する研究の学会発表に必要となる旅費等に適宜用いる予定である。
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