研究課題
近年、我々は新規に合成した核酸類縁体COA-Cl(コアクロル) (2クロル炭素環オキセタノシンA)に強力な血管新生促進作用があることを明らかにしている。COA-Clは、化学的に非常に安定で、そのプリン骨格の2位にクロル基、9位に炭素から成る4員環が結合したユニークな構造をしており、低分子化合物(分子量284)としては唯一、血管新生促進作用を示す物質である。しかしながら基礎研究の段階において未解明な問題が残されており、また臨床応用への展開に関しても検討することが多い。そこで本研究では、COA-Clのまだ解明されていない基礎研究を完成させ、COA-Clおよびその類縁体を利用した血管新生関連治療薬への臨床応用に展開するための基盤研究を行っている。現時点での当該年度の具体的な研究成果を以下に示す。1) 前年度に、COA-Clの類縁体である6種類のCOA-OR(コアアルコキシ)を合成し、その血管新生促進活性を評価した所、特にCOA-OMe(コアメトキシ)にCOA-Clのおよそ半分の活性が有る事を見出した。そこで今回は、その構造活性相関の一環としてCOA-Br, COA-I, COA-NH2の活性評価を行った所、それらの化合物に関して、COA-Clと同等以下の活性があることが判明した(未発表データ)。2) COA-Clのプリン骨格の9位には2つのヒドロキシメチル基を有するシクロブタン環が結合しているが、COA-Clのヒドロキシメチル基の構造異性体を6種類合成し、その血管新生促進作用を評価した。その結果、その内2種類の類縁体について、COA-Clを上回る活性があることが判明した(論文準備中)。
2: おおむね順調に進展している
申請書において、「COA-Clに各種官能基を導入して、血管新生促進作用をさらに向上させる」との目標を掲げたが、今回、COA-Clの構造異性体の一部において、COA-Clを上回る活性を有する誘導体を見出したため。
今回、シクロブタン環に結合しているヒドロキシメチル基の結合様式の異なるCOA-Cl誘導体で高い血管新生促進活性を見出した。そこで今後はCOA-Clのプリン骨格の9位に結合しているシクロブタン環に様々な官能基を導入することや、シクロブタン環をシクロプロパン環等への変換、あるいは非環式COA-Cl誘導体を合成することで、さらなる高活性で且つ低毒性なCOA-Cl類縁体の探索を行う予定である。
消耗品、特に試薬関連の支出が予想よりも少なくて済んだため。今後、高い血管新生促進活性を有し、且つ低毒性なCOA-Cl類縁体を創製するため、試薬や出発物質の購入に充てる。さらに学会発表による研究者同士の情報交換を行う予定であるので、一部は旅費の支出にも充てる。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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