研究課題
我々は新規に合成した核酸類縁体である2クロル炭素環オキセタノシンA (2-Cl-C.OXT-A 、通称COA-Cl(コアクロル))に強力な血管新生促進作用があることを明らかにしている。COA-Clは、化学的に非常に安定で、そのプリン骨格の2位にクロル基、9位に炭素から成る4員環が結合したユニークな構造をしており、低分子化合物(分子量284)としては唯一、血管新生促進作用を示す物質である。この点が注目されCOA-Clは、2010年に和光純薬工業(株)より新規血管新生促進剤として市販されている。また、作用機序に関しては、近年、我々の研究グループにより、スフィンゴシン-1-リン酸受容体、すなわちS1P1受容体の部分的アゴニストとして作用することにより血管新生促進作用を発揮することが判明しつつある。そこで今回、我々はS1P1受容体の活性部位とリガンドであるCOA-Clとをin silicoでのドッキングスタディを行い、その構造活性相関について検討した。さらに、COA-Clのプリン骨格の9位には2つのヒドロキシメチル基を有するシクロブタン環が結合しているが、COA-Clのヒドロキシメチル基の構造異性体を6種類合成し、その血管新生作用を評価した。その結果、COA-Clおよび対応する類縁体とS1P1受容体の活性部位とリガンドとの理論上の結合図と、血管新生促進作用の強弱とがある程度の相関がある事を見い出した(論文投稿準備中)。
2: おおむね順調に進展している
25年度の「今後の研究の推進方策」として「COA-Cl類縁体を複数合成し、より高活性で低毒性な類縁体を創製する」と掲げた。今年度の研究において、より高活性で、合成を行う上で簡便なCOA-Cl類縁体を見い出したため(特許検討中)。
今回、我々の研究グループにより、COA-Clがスフィンゴシン-1-リン酸受容体、すなわちS1P1受容体の部分的アゴニストとして作用することにより血管新生促進作用を発揮することが判明した。しかしながらCOA-Clはスフィンゴシン-1-リン酸と構造を異にしている。そこで今年度は、構造活性相関の詳細を解明するため、COA-Clのプリン骨格の9位には2つのヒドロキシメチル基に着目し、COA-Clのヒドロキシメチル基の構造異性体を合成し、血管新生促進能を評価する予定である。具体的には、COA-Clのシクロブタン骨格に結合するヒドロキシメチル基の水酸基を疎水性官能基(X = F, Br, I, H, N3, OMe)および親水性官能基(X = P(O)(OH)2, OP(O)(OH)2, NH2)へと変換し、その血管新生促進能を評価する。また、in silicoでの対応するリガンドとS1P1受容体とのドッキング計算を行うことで、より高活性で低毒性なCOA-Cl類縁体の創製を目指す。
消耗品、特に試薬関連の支出が予想より少なくて済んだため。
今後、より高活性で低毒性なCOA-Cl類縁体を創製するため、試薬等の購入に充てる。さらに英文校正代、論文投稿料および関連する研究の学会発表に必要となる旅費等に適宜用いる予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) 備考 (2件)
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