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2012 年度 実施状況報告書

Pr55Gagの膜移行を阻害する抗エイズ薬

研究課題

研究課題/領域番号 24790124
研究機関熊本保健科学大学

研究代表者

安楽 健作  熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (80389543)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードHIV-1 / Pr55Gag / リン脂質 / PI(4,5)P2 / イノシトールリン酸 / BIACORE
研究概要

HIV-1のもつタンパク質Pr55Gagは細胞膜リン脂質であるホスファチジルイノシトール4,5-2リン酸{PI(4,5)P2}を介して宿主の細胞膜に結合することによりHIV-1ウイルス粒子を形成する。この結合を阻害する化合物を開発することが本研究の目的である。
これまでのPr55GagとPI(4,5)P2との結合解析結果から、PI(4,5)P2の2’-アシルだけがPr55Gagとの結合に関与すること、一方でジアシルグリセロール部位をもたないイノシトール3リン酸は結合しないが、高度にリン酸化されたイノシトール6リン酸になるとPr55Gagに強く結合することが示唆されている。
研究初年度として、1’-アシル基をもたず2’-アシル基に相当する部分のみを持ち、またPI(4,5)P2よりリン酸基の数が多いPI(2,3,4,5,6)5リン酸アナログを目的化合物として合成した。また2’-アシル基がPr55Gagとの結合に果たす役割を確認するために、1’-アシル基をもつジアシル型の化合物も同様に合成した。さらにアシル基ではなくエーテル結合でグリセロールと結合させたPI(2,3,4,5,6)5リン酸アルキルアナログにおいても合成した。
合成したアナログを用いて、Pr55Gagの細胞膜結合部位であるMA蛋白質との結合活性をBIACOREにて評価ししたところ、すべてのアナログにおいて同じ炭素鎖を持つDi-C8-PI(4,5)P2よりも強くMA蛋白質に結合した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、はじめにPIリン酸アナログの合成を行い、次にBIACOREを用いてPIリン酸アナログとPr55Gagとの結合活性を評価する。またPIアナログ導入後のGFP融合型Pr55Gagの膜移行を確認し、最終的にHIV-1放出抑制実験を計画している。
PIリン酸アナログの合成は、ミオイノシトールを原料として6つの保護基の脱着を繰り返すことでイノシトール部位を合成し、最終的にアシル部位の導入を行う戦略を用いた。保護基としてアセタール化を経由した手法を採用し、さらに大野・長嶋モノアルキル化反応を用いて選択的な保護基の導入を行うことで、効率的にイノシトール部位を得ることができた。このイノシトール部位を用いて、アシル部位とアミダイトリン酸化法を用いてカップリング反応を行い、最終的な脱保護を行うことで目的物を得ることができた。
生物活性評価においては、以前に合成したビオチン化イノシトール4リン酸をBIACOREのセンサーチップに固定化し、競合実験法を用いてPIリン酸アナログとMA蛋白質との平衡解離定数を算出することができた。
したがっておおむね順調に進展しているものと考えられる。

今後の研究の推進方策

現在イノシトール部位においてはラセミ体を用いているため、今後は光学活性体の合成を行い、合成した光学活性体を用いて同様にBIACOREを用いた結合活性を確認する。
BIACOREを使用してリポソーム固定化センサーチップを作製し、細胞膜リン脂質を再現した系を構築する。そのうえで、MA蛋白質との結合解析を実施する。
次にGFP融合型Pr55Gag膜移行実験及びHIV-1増殖阻害実験を行う。
これらの結果をMOEの計算結果と統合し構造最適化を行う。

次年度の研究費の使用計画

光学活性なイノシトール部位を得るために、酵素的アプローチによるミオイノシトール誘導体の不斉非対称化を計画している。それらに基づくHPLCのカラムの購入を予定している。
BIACOREのセンサーチップ上で細胞膜を再現するための試薬ならびにセンサーチップの購入を予定している。
HIV-1増殖阻害実験を行うためのELISAキットをはじめとして生物活性評価における試薬や器具の購入を予定している。
PI(2,3,4,5,6)5リン酸アナログの合成及び結合解析についての論文投稿代ならびに学会発表と情報収集のための旅費の使用を予定している。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Removal of Toxin (Tetrodotoxin) from Puffer Ovary by Traditional Fermentation2013

    • 著者名/発表者名
      Kensaku Anraku, Kiku Nonaka, Toshitaka Yamaga, Takatoshi Yamamoto, Min-Chul Shin, Masahito Wakita, Ayaka Hamamoto, Norio Akaike
    • 雑誌名

      Toxins

      巻: 5 ページ: 193-202

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Versatile Intermediate for the Systematic Synthesis of All Regioisomers of myo-Inositol Phosphates2012

    • 著者名/発表者名
      Takashi Masuda, Kensaku Anraku, Mitsuhiro Kimura, Kaori Sato, Yoshinari Okamoto, Masami Otsuka
    • 雑誌名

      Synthesis

      巻: 5 ページ: 909-919

    • 査読あり
  • [学会発表] HIV-1 MA蛋白質と強く結合するイノシトールリン脂質誘導体の合成と評価2013

    • 著者名/発表者名
      安楽健作,立石大,古賀涼子,東大志,本山敬一,有馬英俊,大塚雅巳,藤田美歌子
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      20130327-20130330
  • [学会発表] HIV-1放出抑制剤を目指したイノシトールリン脂質誘導体2013

    • 著者名/発表者名
      立石大,安楽健作,古賀涼子,藤田美歌子,大塚雅巳
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      20130327-20130330
  • [学会発表] PHドメイン蛋白質と結合し膜に移動させるmyo-イノシトール誘導体の合成2012

    • 著者名/発表者名
      筑葉晃一,工藤康太,舛田岳史,安楽健作,大塚雅巳
    • 学会等名
      第29回日本薬学会九州支部大会
    • 発表場所
      熊本大学(熊本)
    • 年月日
      20121208-20121209
  • [学会発表] 亜鉛フィンガー蛋白質阻害剤SN-1の作用機序解明を目指した研究2012

    • 著者名/発表者名
      園田祥子,安楽健作,古賀涼子,田口祐,井上純一郎,岡本良成,藤田美歌子,大塚雅巳
    • 学会等名
      第29回日本薬学会九州支部大会
    • 発表場所
      熊本大学(熊本)
    • 年月日
      20121208-20121209
  • [学会発表] 亜鉛フィンガー蛋白質阻害剤によるNF-kB活性化経路の遮断2012

    • 著者名/発表者名
      藤田美歌子,古賀涼子,金丸陽亮,江島智彦,園田祥子,安楽健作,田口祐,井上純一郎,大塚雅巳
    • 学会等名
      第30回メディシナルケミストリーシンポジウム
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京)
    • 年月日
      20121128-20121130
  • [学会発表] HIV-1放出抑制剤を目指したイノシトールリン脂質誘導体2012

    • 著者名/発表者名
      立石大,安楽健作,大塚雅巳,藤田美歌子
    • 学会等名
      第26回日本エイズ学会学術集会
    • 発表場所
      慶應義塾大学日吉キャンパス(神奈川)
    • 年月日
      20121124-20121126
  • [学会発表] イノシトールリン酸を基盤とした生物機能性分子の設計と合成2012

    • 著者名/発表者名
      安楽健作,舛田岳史,筑葉晃一,立石大,岡本良成,藤田美歌子,大塚雅巳
    • 学会等名
      第38回反応と合成の進歩シンポジウム
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京)
    • 年月日
      20121106-20121107

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公開日: 2014-07-24  

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