研究課題/領域番号 |
24790125
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
原田 和生 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50397741)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カンゾウ / メタボローム / 品質評価 |
研究概要 |
本研究は最重要生薬であるカンゾウについてメタボローム解析および生物活性試験の相関を解析し,メタボロームデータを用いた生薬品質評価法を確立すること,またこれをもとに市場に流通する野生品と今後流通が予想される栽培品の相違を評価することを目的としている. 富山大学,小松かつ子教授および栃本天海堂,山本豊博士から分譲頂いた中国,モンゴル産野生品および申請者が栽培した植物体の計66種類のウラルカンゾウを試料とした.生物活性試験として抗炎症作用の指標となるマウスマクロファージ細胞の一酸化窒素(NO)産生抑制率を評価したところ,グリチルリチン(GL)含量が局方規定以上の試料でも活性が低いものが見られた.これはカンゾウの品質評価に複数成分の組成を考慮する必要性を示すものである. 続いて抽出エキスのメタボロームをLC/MSにより測定し主成分分析(PCA)に供したところ,栽培品と野生品では差異が見られ,また野生品の分散が大きいことが示された.差異に寄与する成分を示すローディングプロットでは主要成分であるGLやリクイリチン(LQ)とは異なる化合物も検出されており,野生品間のばらつきに当該成分も寄与することが示された. さらにメタボロームデータを説明変数とし,NO産生抑制率を予測する回帰モデルをPLSにより作成した.回帰モデルによるNO産生抑制率の予測値と実測値の間には正の相関が見られ,メタボロームデータから活性が予測可能であることが示唆された.さらに回帰に寄与した成分を示すリグレッションベクトルの値を確認したところ,GL,LQ以外の成分も大きな値を示し,これらの成分も抗炎症作用に寄与する可能性が示された. 以上の成果はメタボロームデータによりカンゾウエキスの生物活性を予測し品質評価に応用できる可能性を示すものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は最重要生薬であるカンゾウについてメタボローム解析および生物活性試験の相関を解析し,メタボロームデータを用いた生薬品質評価法を確立すること,またこれをもとに市場に流通する野生品と今後流通が予想される栽培品の相違を評価することを目的としている.本年度は単味カンゾウエキスについてメタボローム解析および生物活性試験を行い,それらに相関関係があることを見出し,PLSモデルによりメタボロームデータから生物活性試験結果を予測できる可能性を示し,さらに市場流通野生品と栽培品には大きな差異があることを見出した.従って単味カンゾウエキスに対して,本研究の目標は全て達成されたと言える.これらは投稿論文執筆を進めているところである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は単味カンゾウエキスでみられた市場流通野生品と栽培品の相違が他の生薬成分が含まれるエキスにおいてどの程度影響を及ぼすのか検証することを目的し,これまで単味カンゾウエキスを試料として実施してきたメタボローム解析および生物活性試験を,カンゾウ配合漢方薬に置き換えて実施する.予定している漢方薬は芍薬甘草湯,補中益気湯などである. また,マクロファージを用いたNO産生抑制率以外の生物活性試験を実施し,当該データについてもメタボロームデータと相関を解析する.予定ではマクロファージの免疫賦活化作用と肥満細胞を用いた抗アレルギー活性などである.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として1,000,000円を計上した.内訳はカンゾウ以外の生薬材料購入費,エキス作成に必要な溶媒,プラスチック器具,メタボローム解析用の溶媒,カラム,生物活性試験に用いる細胞の培養器具,ELISAなどのキットである.また旅費として300,000円を計上した.内訳は「第6回甘草に関するシンポジウム(7月,北海道)」,「日本生薬学会(9月,北海道)」,「日本植物細胞分子生物学会(9月,北海道)」,「日本農芸化学会(3月,東京)」,「生薬分析シンポジウム(11月,大阪)」を予定している.また,同研究に従事する大学院生も同行させる予定である.その他として100,000円を計上した.内訳は論文英語校閲料,論文投稿料である.
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