研究課題/領域番号 |
24790134
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
佐藤 朝光 福岡大学, 薬学部, 助教 (90369025)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ニドウイルス / シマカ |
研究概要 |
ベトナムのDak Nong にて採集されたCulex tritaeniorhynchus Giles (Diptera: Culicidae)に対し、網羅的にRNAウイルスを同定する方法であるRapid determination of RNA viral Sequence (RDV)法を用いて新しい蚊媒介性RNAウイルスの探索を行った。そして、新しいニドウイルスの単離に成功した。このRNAウイルスは、Dak Nong Virus(DKNV)と名付けられた。DKNVのゲノムRNAの配列決定を行った結果、DKNVは、ニドウイルス目の新しい科であるMesoniviridaeに分類されるウイルスであることが示された。このDKNVのゲノムRNAは、蚊より単離されたAlphamesonivirus 1に分類されるNam Dinh virus (NDiV)やCavally virus(CAVV)のゲノムRNAと高い相同性を有していた。しかし、DKNVは、Alphamesonivirus 1とは異なる群に分類された。次いで、DKNV は、Culex属の蚊由来の培養細胞だけでなく、Aedes属の蚊由来の培養細胞により増殖することが示された。また、DKNVは、脊椎動物由来の培養細胞により増殖することはできないことが示された。さらに、DKNV は、NDiV やCAVV と類似した転写様式を有していた。また、DKNVの構造タンパク質のN末端配列は、スパイク構造をコードする糖タンパク質の前駆体中に、翻訳後に分裂する2つの部位が存在することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Dak Nong Virus(DKNV)のゲノムRNA の完全長配列の決定を行い、DKNVがニドウイルス目の新しい科であるMesoniviridaeに分類されることが示された。このDKNVのゲノムRNAは、蚊より単離されたAlphamesonivirus 1に分類されるNam Dinh virus (NDiV)やCavally virus(CAVV)のゲノムRNAと高い相同性を有していた。しかし、DKNVは、Alphamesonivirus 1とは異なる群に分類された。培養細胞を用いたDKNVの感染実験は、DKNVがCulex属の蚊由来の培養細胞だけでなく、Aedes属の蚊由来の培養細胞によっても増殖することが示された。また、DKNVは、脊椎動物由来の培養細胞により増殖しないことが示された。DNKV の転写メカニズムの解明は、DKNV がNDiV やCAVV と類似した転写様式を有することを示した。また、DKNVの構造タンパク質のN末端配列は、スパイク構造をコードする糖タンパク質の前駆体中に、翻訳後に分裂する2つの部位が存在することを示した。一方、RACE法によるゲノムRNAの決定が転写による副産物の障害などにより遅れたことから、野外調査によるDKNV の感染率の調査や有効な抗ニドウイルス薬の作用部位となるタンパク質の決定には至らなかった。以上より、本研究の進捗状況はやや遅れているが、目的は概ね達成されていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
DKNVの蚊の感染率に関する野外調査は、今後に予定されている隔離された野外における抗ニドウイルス薬の抗ウイルス効果の評価に向けた基礎データとして重要性が高く、次年度に行う予定である。特に、これまでの研究成果により、DKNV が、Culex属の蚊由来の培養細胞だけでなく、Aedes属の蚊由来の培養細胞によっても増殖することが示された。したがって、DKNVの主要な媒介蚊がAedes属の蚊である可能性もあることから、野外採取する蚊の対象をCulex 属の蚊のみならず、Aedes 属の蚊まで範囲を広げる。そして、DKNV の主要な媒介蚊の特定や成虫から幼虫への垂直感染の確認を行う。一方、SARS-CoV に対する抗ウイルス薬の作用機序を参考として、有効な抗ニドウイルス薬の作用部位となるタンパク質を決定する。そして、siRNAを用いてC6/36細胞のタンパク質を特異的に発現抑制し、DKNVの増殖抑制を指標とした抗ウイルス効果の評価も行う予定としている。また、次年度に予定された屋内外での抗ニドウイルス薬の効力評価は研究計画に従って行う予定としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、RACE法によるゲノムRNAの決定が転写による副産物の障害などにより遅れた。したがって、野外調査によるDKNV の感染率の調査や有効な抗ニドウイルス薬の作用部位となるタンパク質の決定には至らなかった。次年度は、本年度に予定されていたDKNVの感染率に関する野外調査を行うため、繰り越された消耗品費などを活用する予定である。また、野外調査は、Universiti Sains Malaysia およびUniversity of Malaya の協力のもとペナン島にて蚊の採集を行うことから、マレーシアへの調査・研究旅費等に繰り越された旅費を利用する予定である。一方、本年度に予定されていた有効な抗ニドウイルス薬の作用部位となるタンパク質を決定するために、siRNAの購入などに繰り越された消耗品費を活用し、研究を進める予定である。また、次年度に予定された屋内外での抗ニドウイルス薬の効力評価は、研究計画に従って研究費を活用する予定である。
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