研究課題/領域番号 |
24790140
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 夕紀 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00564981)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本申請研究では、機能性食品成分の消化管における吸収機構に関する検討、さらに乳剤化等による製剤学的な検討を行い、機能性食品成分の科学的根拠に基づく吸収改善理論を確立することを目的としている。これまでに当研究室では、機能性食品成分であるルテインや、コエンザイムQ10(CoQ10)の消化管吸収率が10%以下と極めて低いこと、乳剤化によりその吸収を改善できることを明らかにしている。そこで、種々の異なる構成成分の乳剤を調製し、乳剤の物性を把握するため、動的光散乱光法により粒子径を測定した。また、それらの乳剤を実験動物へ経口投与後、経時的に採血し、抽出操作後、血漿中濃度推移を検討し、各動態学的パラメータを算出した。 その結果、調製した乳剤の粒子径は約200~300 nmであり、それぞれの乳剤で大きな変化は見られなかった。さらに、この中の一つの乳剤を基板に滴下し、乾燥後スパッタ処理を行い、走査型電子顕微鏡で観察したところ、上記のサイズの粒子が確認された。このことから乳剤中に粒子がきちんと形成されていることが示された。また、これらの乳剤の経口投与後の血漿中濃度推移から親水性の高い界面活性剤を用いると、AUCが大きいことが示され、吸収改善効果が高いことが示唆された。これらの結果から、親水性の高い界面活性剤を用いると、親油性の高いものを用いた場合よりも小腸の非撹拌水槽を通過しやすくなり、その成分が消化管細胞内に多く取り込まれ、結果的に高い血漿中濃度が得られることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究の初年度(平成24年度)では、構成成分の異なる乳剤の物性の把握と最適化と、詳細な消化管吸収機構の解明のための検討を進めてゆくことを目的としていた。異なる成分から成る乳剤について、種々検討を行い、親水性の高い界面活性剤を用いると、AUCが大きいことが示され、吸収改善効果が高いことが示唆された。また、ルテインやCoQ10の消化管吸収には、小腸コレステロールトランスポーターとして報告のあるNPC1L1(Niemann-Pick C1-Like 1)が、関与するという知見を得た(2012年 ルテインに関して原著論文あり)。以上のことから、当該年度の目的は概ね達成されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の検討結果を踏まえて、トランスポータの制御、あるいは乳化に関しては乳剤の物性を制御することにより、基質成分の吸収改善につながるかどうかの確認を行う。トランスポータの寄与が大きい場合は、siRNAによるトランスポータのノックダウン等により、実験動物へ経口投与した場合の血漿中、組織中濃度を測定し、AUC、Cmaxなどの動態学的パラメータを算出することで評価する。また、乳剤の寄与が大きい場合は、複数の乳剤を同様に投与し、パラメータを算出することにより、どの乳剤を用いた場合に高い濃度が得られるのかを評価する。これらの知見を考察することで低い吸収率を示す機能性食品成分の吸収改善法を確立する。また、得られた知見は速やかに国際誌等に投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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