本申請研究では、機能性食品成分の消化管における吸収機構に関する検討、さらに乳剤化等による製剤学的な検討を行った。 まず、異なる構成成分から成る乳剤を複数調製し、乳剤の物性を把握するため、動的光散乱光法により粒子径を測定した。続いて、それらの乳剤を実験動物へ経口投与後、経時的に採血し、抽出操作後、血漿中濃度推移を検討し、各動態学的パラメータを算出した。 その結果、調製した乳剤の粒子径は約200 nmであり、それぞれの乳剤で大きな変化は見られなかった。また、この中の一つの乳剤を基板に滴下し、乾燥後スパッタ処理を行い、走査型電子顕微鏡で観察したところ、上記のサイズの粒子が確認されたことから乳剤中に粒子がきちんと形成されていることが示された。続いて、脂溶性の高いモデル物質としてCoenzyme Q10 (CoQ10)を選択し、これらの乳剤の経口投与後の血漿中濃度推移を求めた。その結果、親水性の高い界面活性剤を用いると、AUCが大きいことが示され、吸収改善効果が高いことが示唆された。これにより、親水性の高い界面活性剤を用いると、親油性の高いものを用いた場合よりも小腸の非撹拌水槽を通過しやすくなり、その成分が消化管細胞内に多く取り込まれ、結果的に高い血漿中濃度が得られることが考えられる。さらに、乳剤を投与しても、胆管を結紮したラットを用いた実験において、CoQ10は原末と同程度しか吸収されず、胆管を結紮したラットに胆汁成分をまぜた乳剤を投与することで、その吸収は大きく改善されたことから、胆汁は脂溶性成分の吸収に関して、投与された乳剤をより微細化することで吸収改善に非常に重要な役割を果たしていることが考えられる。以上より、脂溶性成分の吸収にはミセルの粒子径が大きく寄与していると考えられ、粒子径を小さくすることが吸収改善の戦略の一つとして考えられた。
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