本研究ではスニチニブなどの分子標的治療薬の中でも血小板減少を高頻度で起こす薬剤について、その血小板減少の作用機序を解明することを目的として行った。 数千の血小板は1個の巨核球から産生されるため、本研究では巨核球に注目して研究を行った。巨核球は骨髄に存在しており、骨髄穿刺を行って巨核球を採取し研究に用いることは倫理的に非常に問題がある。 そこで、本研究ではiPS細胞から巨核球を作製し、分子標的治療薬が巨核球に与える影響を調べることで倫理的な問題を回避することにした。iPS細胞から巨核球への分化には、まずVEGFを添加しiPS-Sacを作製する必要がある。iPS-Sacの効率はVEGFを添加した際に上昇したが、一方で血球系細胞のマーカーであるCD33陽性細胞数が減少した。そこで、VEGFを添加せずに分化を行ったところ、CD33陽性細胞数がVEGF添加時と比較して増加した。 また、iPS-Sacから巨核球への分化誘導を行い、巨核球を作製した。巨核球の作製にあたり、分化時における培地の組成、ならびに添加物を検討したところ、従来報告されている培地や添加物とは異なる条件下において、巨核球への分化誘導が高まることを発見した。 血小板減少を引き起こす分子標的治療薬は限られており、その作用機序であるキナーゼ阻害が血小板減少の原因であると考えられる。分子標的治療薬では、ターゲット以外のキナーゼ阻害作用もあり、その阻害効率は薬剤毎に異なっている。このことから、血小板減少を引き起こす分子標的治療薬のみが特異的に阻害するキナーゼを探索することで、分子標的治療薬による血小板減少の作用機序を特定できるものと推測され、現在このキナーゼを探索する研究を継続している。
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