抗体医薬品は多くの疾患の治療に用いられており、副作用が少なく、高い治療効果が期待できるとされている。一方、その効果や副作用には個人差が存在することも知られており、抗体医薬品に対する抗体(抗抗体医薬品抗体)発現に起因すると考えられる二次無効や重篤な副作用の発現は特に臨床上の重大な問題となっている。本研究では抗体医薬品および抗抗体医薬品抗体の薬物動態の観点から抗体医薬品の効果の個人差を解明し、この個人差を予測するためのマーカー検索を進めるとともに二次無効の発現メカニズムおよび対応方法を検討することとした。 昨年度までにバイオマーカー解析技術を用いた質量分析計による生体中抗体医薬品等の分析法の確立プロセスについて検討し、インフリキシマブの分析方法を構築したが、その前処理法に問題が確認されたため、生体中抗体医薬品の分析法を再構築した。本分析法構築プロセスをセツキシマブの分析法構築に応用したところ、当該抗体医薬品のアミノ酸配列の確認を経ず、短時間で血中濃度分析法を確立できた。これにより、抗抗体医薬品抗体等の未知タンパクを含む各種生体内タンパク成分の分析法の短時間での構築が可能となった。 現在、本法を用いて患者の血中抗体医薬品の分析および抗抗体医薬品抗体の解析を進めている。また、抗抗体医薬品抗体の発現に影響すると考えられる免疫抑制薬や各種免疫関連因子も同時に解析し、抗抗体医薬品抗体や二次無効発現リスクへの影響の評価を進めている。さらに、抗抗体医薬品抗体の発現機構の詳細な解析に向けた動物実験として、ラットおよびマウスを用いた抗体医薬品投与に伴う血液中タンパク成分の変動解析および各主成分の発現と抗体医薬品の効果の関係に関する研究について詳細な実験条件の調整等の準備を進めている。 これらの結果がまとまり次第、基礎検討結果および臨床研究結果を論文発表もしくは学会発表の形で公表する予定である。
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