医薬品の「名称」及び「外観」の類似は、医薬品の取り違えを誘発する重要な要因であり、医薬品の取り違えを防止し安全対策を行う上で、医薬品の類似度を定量化する適切な指標が不可欠である。 我々は、文字列の順序(連続性)を考慮した断片パターン指標をもとに、先頭及び末尾部分の一致への重みづけ、濁音・半濁音や字形の類似(半一致)を考慮した薬名類似度指標を構築してきた。本研究では、主観的類似度には上記類似因子の他に文字列長の差も寄与していたこと、末尾部分一致よりも先頭部分一致の寄与が大きかったことから、これらを考慮した改良型薬名類似度指標 m2-vwhtfrag を構築した。実際に起こった取り違え事例を解析した結果、m2-vwhtfrag 指標値が 0.46 以上の組み合わせでは取り違えが発生する可能性があると予測された。 一方、医薬品の外観類似度を定量的に評価する指標はこれまで報告されていない。我々は、PTP シートの外観類似には、シートの色、錠剤の色、錠剤の形、印字の色、シートのサイズといった類似因子が影響を及ぼすことを明らかにしてきた。そして、これら色やサイズといった因子を数値化し、試験で得られた主観的類似度を表現するモデル式を構築した。本研究では、一部の医薬品について外観要素(シートの色、印字の色、錠剤の色、シートのサイズ、錠剤のサイズなど)を抽出し、モデル式を用いて類似度を算出するために必要なパラメータとしてデータベース化を行った。さらに、これらのデータをもとにモデル式を用いて2つの PTP シート間の類似度を自動算出するウェブブラウザベースシステムのプロトタイプを構築した。 本研究で構築した指標を用いて医薬品取り違えによるインシデント・アクシデント事例を大規模に分析することにより、最終的には投薬ミスの減少が期待される。
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