研究課題/領域番号 |
24790149
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
澤本 一樹 金沢大学, 大学病院, 助教 (80608696)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | BMI / 肥満 / 個別化医療 / タクロリムス / シクロスポリン / 薬物動態変動 / トランスポーター / 投与設計 |
研究概要 |
肥満状態における様々な生理学的変化は薬物の体内動態に影響を与えると考えられる。しかし、臨床において肥満時の薬物動態変動および薬物投与設計に関しては未だ明確にされていない。そこでまず、Therapeutic Drug Monitoring(TDM)対象薬物でもあるシクロスポリン、タクロリムスに焦点を当て、Body Mass Index値(BMI値)の変動にともなう血中濃度変化を明らかにすることを目的とした。金沢大学医学倫理審査委員会の承認を得た後に、シクロスポリンあるいはタクロリムスが投与されTDMが行われた患者を対象に後方視的調査を行い、血中トラフ濃度を投与量で標準化したトラフ血中濃度/投与量比(C/D比)とBMI値の関係について解析した。シクロスポリンおよびタクロリムスを投与された男性患者ではBMI値とC/D比に正相関を認めたが、一方で女性患者では相関を認めなかった。また、肥満モデルラットにタクロリムスを静脈内投与したところ、対照群と比較して血中濃度下面積(AUC)は増大し、クリアランスおよび分布容積の低下を認めた。今後は、タクロリムスの経口投与を行い、肥満状態がバイオアベイラビリティに与える影響を検討する。また、BMI値とC/D比の相関に男女差が認められた要因の一つとして、CYP発現の性差が関与するのではないかと考えており、さらに検討を加える予定である。以上より、臨床において肥満患者の中でもとりわけ男性ではシクロスポリンおよびタクロリムスの血中濃度上昇に注意する必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画内容であった「BMI変動によるヒト薬物血中濃度解析(①)」と「肥満ラットを用いたタクロリムスおよびシクロスポリンの体内動態変動要因の解析(②)」については概ね実施することができた。②については、経口投与のデータが十分でないため今後追加していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究実施計画内容であった「BMI変動によるヒト薬物血中濃度解析」については今後も症例を追加していく予定である。また、「肥満ラットを用いたタクロリムスおよびシクロスポリンの体内動態変動要因の解析」については、経口投与実験および肝臓、小腸および腎臓のトランスポーター、薬物代謝酵素の発現変動の解析を行っていく。また、平成25年の研究実施計画内容である「肥満におけるフェンタニル血中動態変動の解析」および「BMIとフェンタニル薬物動態のヒト試験」についても当初の予定通り行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で使用していた血中タクロリムス濃度の測定試薬が2013年の1月に一時販売中止となってしまったため、次年度に使用する研究費が生じた。2013年5月に試薬の供給が再開される見通しとなっているため、当初の計画通り購入する予定である。
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