経口投与された薬物の消化管吸収を制御する因子として、小腸刷子縁膜に発現するトランスポーターが着目されており、トランスポーター基質の相互作用が臨床的に報告されている。本研究は我々が複数のトランスポーターの発現・機能制御因子であることを見出したアダプタータンパク質PDZK1に着目し、(i)トランスポーター・アダプター共発現系を用い、生体での薬物間相互作用評価系を確立すること、(ii)その系を応用して臨床薬の薬物間相互作用解明を試みた。小腸での吸収機構が未知であった経口血小板増多剤eltrombopag(ELT)の消化管吸収機構に排出トランスポーターBCRPが関与することをin vitroおよびin vivoの両面から明らかとした(論文投稿準備中)。BCRP介したELTの経細胞輸送はBCRP単独発現細胞でもわずかに観察されたが、その輸送はPDZK1存在下で有意に高く、特異的阻害剤存在下でMock細胞レベルまで阻害された(論文投稿準備中)。Mdr1a/1b/bcrp^<-/->マウスを用い、ELTの消化管吸収にBCRPが関与することを示した。ELTは高脂血症治療薬rosuvastatin(RSV)との併用で、RSVの血中濃度が1.5倍上昇することが報告されている。RSVの消化管吸収にもBCRPが関与することから、RSV輸送に対するELTの影響を検討した。BCRPを介したRSV輸送はELT濃度依存的に阻害された。よって、BCRPを介したRSVの消化管分泌をELTが阻害することで、臨床においてこの両者を併用した際にRSVの血中濃度が上昇した可能性を示唆した(論文投稿準備中)。本申請研究は順調に進行し、その結果は国内学会、国際学会で発表するとともに、学術誌に投稿準備中であり、世界に向けて情報を発信した。
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