医療現場における職業性曝露については、主として電離放射線などによる物理的な曝露・ウイルスなどによる生物学的な曝露・医薬品や化学物質による化学的な曝露が想定される。一般に、職業性曝露に対する調査は外部曝露調査・内部曝露調査・細胞レベルでの影響調査・個体レベルでの影響調査の4つに大別され、それぞれ対象物質との因果関係や人体への直接的な影響の大きさが異なる。 本研究は、医療現場における主要な職業性曝露の一つである注射用抗がん剤の混合調製時における化学的曝露の現状を包括的に調査することで、現在その曝露対策として策定されている標準予防策の有用性を検証し、評価することを目的とした。 平成25年度は、細胞レベルでの影響調査と個体レベルでの影響調査を実施し、前年度の成果と合わせて医療現場での化学的曝露に対する標準予防策の有用性の検証を行う事を当初目的とした。しかしながら、前年度の成果により、外部曝露調査・内部曝露調査ともに当初計画以上に研究の全体像が拡大し、薬剤の揮発性が外部曝露の原因の一部になっているという非常に興味深い知見が得られたため、平成25年度は前年度に得られた成果をさらに発展させ、以下の成果を得た。 1) 石英フィルターとODSフィルターを用いた揮発性評価システムが、吸引する空気の流量や流速によらず安定的に評価可能であることを見出した。2)本評価システムを利用して、実際に医療現場のエアサンプリング (外部曝露調査) を行ったところ、一部の薬剤について極めて少量の汚染が見られた。3)さらに多くの抗がん剤の未変化体・主要代謝物の同時定量法を開発した。4)内部曝露調査の実施にあたり臨床研究倫理審査委員会への申請を行い、承認された。
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