研究課題/領域番号 |
24790153
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
津金 麻実子 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 招へい教員 (00469991)
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キーワード | 抗HIV薬 / 脂質代謝異常 / 臨床薬学 |
研究概要 |
本研究では、抗HIV薬の長期服用により起こる副作用である脂質代謝異常やリポアトロフィーの発現メカニズムを解明することを目的とする。具体的には、副作用の出現状況等について診療記録をもとに調査するとともに、患者の尿検体を用いて共通の病態を示すメタボリックシンドロームでの関与が報告されているグルココルチコイド活性化酵素11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1(11β-HSD1)の関与を検討する。 平成25年度は、主に、以下のように兵庫医科大学病院において対象患者の抽出、診療記録(カルテ)による患者背景情報の収集、対象患者の随時尿の採取を行った。 1、HIV感染症に対する治療を開始する患者が発生し次第、選択基準、除外基準に基づき対象患者として抽出。2、診療記録により、対象患者における年齢、性別、服用中の薬剤等の情報を調査。3、代謝異常やリポアトロフィー症状出現の有無を判定するため、患者の受診ごとに行う血液学的検査値を調査。また、抗HIV薬による治療前後における身長、体重、ウエスト周囲径、ヒップ周囲径、骨密度、内臓脂肪量の変化を測定し、随時尿を採取。 1人の対象患者につき、HIV感染症に対する治療開始前6週間以内に背景情報の収集を実施し、治療開始後48週まで観察を続行した。平成25年度までに、対象患者の抽出および患者情報や尿検体の収集は完了した。 加えて平成25年度は、尿検体における11β-HSD1の活性をLC-MS/MSで測定する条件の検討を実施した。11β-HSD1の活性は、細胞内のコルチゾンが11β-HSD1で代謝される前後の生成物で評価する。そこで、健常者の尿に11β-HSD1の代謝産物の標準試薬を添加し、検体の前処理および濃縮、LC-MS/MSの各種測定条件を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、兵庫県エイズ治療中核拠点病院である兵庫医科大学病院においてHIV感染症に対する治療を開始する患者が発生し次第、対象患者として抽出し調査を実施した。診療記録による臨床調査は、各々の対象患者に対し抗HIV薬による治療開始後48週まで継続するが、平成25年度までに、解析に必要とされる患者数について調査および尿検体の採取を終了した。臨床記録による調査結果はデータベース化してまとめ、尿検体はすべて凍結保存している。また、LC-MS/MS を用いた尿検体による11β-HSD1活性の測定についても条件検討が進行しており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度にはまず、平成25年度までに検討を行ったLC-MS/MSの測定条件を用いて、患者の検体における11β-HSD1の活性を測定する。グルココルチコイド前駆体であるコルチゾンは、細胞内のグルココルチド活性化酵素11β-HSD1によりコルチゾールに変換される。最終代謝産物としてコルチゾールはtetrahydrocortisol(THF)とallo-tetrahydrocortisol(allo-THF)、コルチゾンはtetrahydrocortisone(THE)の形で尿中に排出される。11β-HSD1の活性は尿中比と呼ばれるTHFとallo-THFの濃度の和をTHEの濃度で除した値(THF+allo-THF)/(THE)で評価できる。そこで、尿検体中のTHF、allo-THF、THE濃度をLC-MS/MSで測定して、尿中比を算出する。 続いて、これまでに得られた臨床調査の結果および尿中比の算出結果を用いて解析を実施する。代謝異常やリポアトロフィーなどの副作用の発現有無と、尿中比やリポアトロフィー症状に関連する臨床検査値などのパラメーターで変動に相関がみられるものを検出して、副作用発現における11β-HSD1の関与を明らかとする。それによって、尿中比の抗HIV薬服用患者における脂質代謝異常等の病態を診断するマーカーとしての妥当性を検討する。また、リポアトロフィーや代謝異常の出現有無の患者間で各種患者背景情報、検査値で多変量解析を実施し、副作用発現のリスクファクターを明らかとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画当初、患者の尿検体を保存するためのフリーザーや前処理に使用する遠心機を購入する予定であったが、尿サンプル採取のための容器や量を臨床現場の状況に合わせて変更したため、既存のもので代用可能となり購入を取りやめた。そのため、平成25年度の使用額に未使用額が生じた。 LC-MS/MSを用いた11β-HSD1の活性の評価に関わるコルチゾンやコルチゾールの代謝産物の測定において、尿中に存在するこれら代謝産物のグルクロン酸抱合体や硫酸抱合体の分解に関して更なる検討が必要となった。これら代謝産物や内部標準物質の標準試薬が高価であるため、平成26年度もLC-MS/MSによる測定の条件検討や検体の測定を継続するために追加で購入する。
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