本研究はアルツハイマー病(AD)に対する経皮ワクチン療法の開発を目的に研究を推進している。近年アミロイドβ (Aβ) を注射投与するワクチン療法がAβ凝集体の形成阻害、除去を狙った新規AD治療戦略として期待されたが、臨床研究においてAβ反応性のTh1型細胞の過剰な活性化に起因する髄膜脳炎という重篤な副作用を誘発したために頓挫した。そこで研究代表者は経皮ワクチンが注射ワクチンよりも免疫応答をTh2優位に偏向させるという知見に基づき、副作用を回避しうるADワクチン療法の開発に取り組んでいる。 平成25年度では、Aβとアジュバントとしてコレラトキシンを含有した針長800μmあるいは300μmの皮膚内溶解型マイクロニードル(MH800、MH300)を用いてADモデルマウスに対して経皮免疫を行い、その有効性ならびに安全性を評価した。その結果、MH300ならびにMH800を用いて経皮ワクチンしたADモデルマウスにおいては血清中抗Aβ IgG抗体の誘導が検出され、そのレベルは皮内注射ワクチン群を大きく上回った。また、無処理マウスと比べて経皮ワクチン群の認知機能にはわずかながらではあるが改善効果が認められ、脳内Aβ凝集体の減少も観察された。しかしながら、抗体サブクラス解析の結果から、経皮ワクチンにより誘導される免疫応答が注射ワクチンと同じくTh1優位であることが判明し、当初の目的である副作用抑制を達成するためには、本手法の改良の必要性が示された。
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