研究課題/領域番号 |
24790156
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 和宏 神戸大学, 医学部附属病院, その他 (30610349)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 皮膚障害 / 分子標的治療薬 / 手足症候群 / STAT3 / 角化細胞 |
研究概要 |
エベロリムス、ソラフェニブ、スニチニブを用いて、不死化表皮角化HaCaT細胞に対する細胞増殖抑制作用を制御する因子についてSTAT3に着目し、多角的に検討を行った。 1.阻害剤および遺伝子導入によるSTAT3活性化変動に伴う細胞増殖抑制作用の変動:STAT3の選択的阻害剤であるstatticを前処置した細胞ではstattic無処置群と比較して、細胞増殖抑制作用が顕著に増大し、アポトーシスによる細胞死の割合がstattic処置群では高値を示した。また、本現象は腎癌由来Caki-1細胞および肝癌由来HepG2細胞においては認められず、表皮角化細胞に特異的な現象であることが示唆された。また、恒常的に活性化したSTAT3(STAT3C)を遺伝子導入法により発現させ、各薬剤を処置すると、コントロールベクターを遺伝子導入した群と比較して細胞増殖抑制作用が顕著に軽減された。 2.角化細胞のシグナル因子に及ぼす分子標的治療薬の影響:各薬剤を処置後のシグナル伝達因子を評価すると、処置濃度依存的にSTAT3のTyrosin705のリン酸化が減少し、それに伴うSTAT3の核移行分率の低下も認めた。また、表皮角化細胞でのみ、survivinの発現低下とAkt、p38の活性化が認められ、皮膚特異的なシグナル因子の変動である可能性が示唆された。 以上より、エベロリムス、ソラフェニブ、スニチニブの表皮角化細胞における細胞増殖抑制作用はSTAT3の活性化変動に大きく寄与する可能性を示した。また、survivinの発現低下とAkt、p38の活性化は皮膚毒性のマーカーとなる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表皮角化細胞以外の細胞株を用いた細胞毒性評価、シグナル伝達因子の変動、アポトーシス解析については概ね完遂している。表皮角化細胞以外の細胞株としては腎癌由来Caki-1細胞および肝癌由来HepG2細胞を用いて、STAT3阻害剤存在下での細胞増殖抑制作用を評価した。また、シグナル伝達因子の解析においてもHaCaT、Caki-1、HepG2細胞を用いた検討を行い、13種の項目について評価を行うことができた。IN Cell Analyzer2000を用いたImaging Cytometer法によるアポトーシス解析においても測定系の確立から検体の解析まで遂行することができた。 特定因子の発現変動においても、恒常的に活性化したSTAT3(STAT3C)やSTAT3のsiRNAなどによる発現変動を細胞増殖抑制作用と連結させて評価することができた。しかしながら、サイトカインの変動解析や臨床検体を用いた解析は実行に至っておらず、今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に計画していたサイトカインの定量、mRNA発現解析やそれに付随するシグナル伝達因子の活性化変動解析について早急に取り組み、本研究の培養細胞を用いた検討項目を完了させる。各検討には既に最適化されたプロトコルが存在するため、新たな測定系を確立する必要はない。 臨床検体を用いた解析については症例の蓄積が必要である。腎細胞癌の治療でエベロリムス、ソラフェニブまたはスニチニブを服用しており、皮膚障害を発現している患者を集積できるかが課題となるが、当院の泌尿器科では腎細胞癌の分子標的治療の症例を多数有しているため問題ないと考えられる。また、技術的な面については、当院皮膚科、本学共同研究施設および当院病理部の指導のもと行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は細胞の譲渡や安価な試薬の導入により残余が生じたため、平成25年度の消耗品などに充填することとする。 消耗品:細胞培養器具・試薬類(1000,000円)、ELISAキット・RNA抽出キット・realtime-PCRキット(SYBER-Green)などの解析キット(700,000円)、患者検体の処理・解析費用(300,000円) 旅費:学会参加費用(情報収集)(100,000円)、(成果発表)(100,000円) その他:成果投稿料(100,000円) 以上を予定している。
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