研究課題
分子標的治療薬による皮膚障害の発症メカニズムについて、分子生物学的な解明を目的として種々の検討を行った。皮膚障害を発症しやすい分子標的治療薬としてエベロリムス、ソラフェニブおよびスニチニブを選定し、皮膚の恒常性を制御する因子として報告されているSignal Transducer and Activator of Transcription (STAT) 3と薬剤の細胞障害性および細胞分子変動との関連性を、ヒト表皮角化由来細胞(HaCaT)を用いて評価した。各薬剤のHaCaT細胞に対する細胞障害性はSTAT3阻害剤を併用することで顕著に増大し、また、STAT3の恒常的活性化体であるSTAT3Cを遺伝子導入により過剰発現させることで、細胞障害性は顕著に減弱した。このことは、各薬剤のアポトーシス効果においても同様の結果が得られている。さらに、各薬剤を処置した細胞のシグナル伝達因子の活性の変化を評価すると、全ての薬剤で濃度依存的なSTAT3の活性低下を示した。さらに、STAT3により発現を制御をされているbcl-2、survivinなどの抗アポトーシス因子の発現がSTAT3の活性と同様の挙動を示したことから、STAT3活性変動を介した抗アポトーシス因子の発現変動が分子標的治療薬による角化細胞の障害性に寄与している可能性を示した。これらの結果はSTAT3活性を欠損したヒト腎癌由来細胞(Caki-2)および肝癌由来細胞(HepG2)では認められず、表皮角化細胞特異的なSTAT3の活性化変動が本現象に寄与していることを示唆した。STAT3には日本人において遺伝子多型が報告されており、機能的変異であることも報告されているため、患者検体を用いたSTAT3遺伝子変異と分子標的治療薬による皮膚障害の関連性について、現在検討を進めている。
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Journal of Experimental & Clinical Cancer Research
巻: 32 ページ: 1-10
10.1186/1756-9966-32-83.