難治性疾患の有望な治療薬として期待される抗体医薬 (mAb) は、その血中濃度と薬効の関係性に最近注目が集まりつつある。しかし、ヒト化された mAb は生体内の抗体と相同性が極めて高く、簡便・迅速かつ精密に血中濃度測定できる分析法が十分に整備されていない。そこで本研究では、臨床応用可能な簡便性・検体処理速度・精密さを備えた新規測定法を開発する。具体的には、新たに考案した前処理操作で血中から mAb を高選択的に捕集し、mAb 由来ペプチドを従来の1/10の酵素消化時間で得た後、それらを秒単位で分離定量する測定法を構築する。 前年度の結果を受け、平成25年度はまず、文献から取得したインフリキシマブの配列情報とヒトタンパク質データベースをもとに、各mAbに固有のFab由来ペプチドを3個選別した。次にFab由来のペプチドを分離定量するための、LC-MS/MS 条件 (LC 条件:緩衝液 pH及び濃度;MS/MS 条件:イオン化電圧及び温度) の最適化を改めて行った。続いて、3個のペプチドについてMultiple Reaction Monitoring法で定量性を確認したところ、1個のペプチドが濃度依存的なピークの増加を示し、サロゲートペプチドとして有望であることがわかった。前年度に開発した TNF-alpha;固定化磁気ビーズを用いることで前処理・測定のいずれの段階でも選択性が向上し、高精度な分析法になると予想される。さらに現在インフリキシマブ投与患者の臨床検体を収集中であり、治療開始・著効・効果減弱と血中インフリキシマブ濃度の関連性を調べる予定である。
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